【田原】意外ですね。経営者になるために慶応に行ったのかと思った。
【中山】事業に興味が出てきたのは大学生になってから。弁護士の仕事がよくわからなかったので弁護士事務所でアルバイトを始めたのですが、新規事業の法律相談にやってくるビジネスパーソンたちを見ていたら、ゼロから事業をつくっていくことのほうがおもしろそうに思えました。
【田原】お父さんからの影響はなかったのですか?
社会に何か価値を残すべき
【中山】父は普段は何も言いません。ただ、家族で焼き肉屋さんに行ったとき、突然、改まった顔で、「人として生まれたからには、社会に何か価値を残すべきだ。子どもを残すのもいいし、事業を残すのもいい」と言われたことはあります。それなら僕は事業だなと。
【田原】卒業後はサイバーエージェント(CA)に入る。どうしてCAに?
【中山】入社したのは2006年。いまでこそCAは大きな会社ですが、僕が就活をしていた04~05年はアメーバブログが始まったあたりで、とにかくいろんなことに挑戦していました。成長中の若い会社なら、20代のうちに事業を起こすチャンスがあるはず。そう考えて入社を決めました。IT領域であることも大きかった。既存の産業だと、若い自分は40~50歳のベテランに比べて周回遅れのスタート。しかし、新しい産業ならベテランと同じ位置から始められる。スタートが同じなら若いほうが勝つと思っていたので。
【田原】入社してみて、藤田晋さんはどんな人でしたか?
【中山】朴訥な人ですよ。それと同時に、あれだけバランス感覚を持って社会とマーケットを見られる人はそういないと思っています。
【田原】バランス感覚を持っていると、普通はいろいろ気配りして保守的になっていくんだけど、藤田さんはそうじゃないんだ。
【中山】取りうるリスクを最大限取って経営していますよね。たとえばAbemaTVはまだ赤字ですが、その他の事業が伸びているから思い切った投資ができる。取りうるリスクがあるのに取らないのはダメだと、背中で教えてもらっている気がします。