【田原】どうして日本はダメなんですか。値段が高いから?

みんなが欲しいものをつくれていない

【中山】一部にはそれもあると思います。日本はコンテンツのライセンスフィーが高いのですが、韓国はとても安いので。でも、ものづくりの分野に関しては、それ以前の問題ですね。当時、ベトナムでは10万円するiPhone4が年間200万台売れていました。初任給が2万~3万円の国で、10万円はかなりの額。それでも売れるのですから、高い安いじゃない。日本メーカーは単にみんなが欲しいものをつくれていないだけだと。

【田原】どうして日本から欲しいものが生まれないんだろう?

【中山】日本の企業にも、いいコンテンツや商品の企画はあるんです。でも、それが世に出る前にお蔵入りしてしまう。それはいまの事業をやってから気づいたのですが。

【田原】中山さんはベトナムから帰ってきてマクアケを立ち上げました。ベトナムでそのことに気づいて事業を立ち上げたんじゃないの?

【中山】それならストーリーとしてカッコいいのですが、実際は事業立ち上げが先です。CAで役員たちが新規事業を考える「あした会議」で、クラウドファンディング事業を立ち上げることが決まり、僕がやることになりました。

【田原】そうですか。クラウドファンディングというのは、どういうビジネスですか?

【中山】当時はふわっとしていましたね。たとえば非上場株への投資プラットフォームもクラウドファンディングと呼ばれていたし、いやいや、社会貢献活動への寄付サイトでしょという見方もあった。10人いればそれぞれ抱くイメージが違って、最初は僕もよくわかっていませんでした。

【田原】最初は何から始めたの?

【中山】最初は募金ツールのイメージを持って始めました。そのように位置づけたのは、お金さえ集まればすべて解決できると考えていたから。でも、いろいろ話を聞いてみると、そうじゃなかった。

【田原】どういうこと?

【中山】メーカーになぜアイデアがお蔵入りするのかと聞きに行ったら、「売ってくれる人と買ってくれる人がいればつくる」という。ものづくりは投資が大きくなるだけに、販路や顧客に確証がないと、ゴーサインを出せないというのです。

【田原】つまり営業サイドがイエスと言わないと商品化されないわけだ。

【中山】そうです。ならば、つくる前に、欲しいかどうかを消費者に直接問いかけて、テストマーケティングしてみればいい。そこに気がついて、事業を始めて2年経ってから予約購入スタイルに切り替えました。

【田原】結構かかりましたね。