ジョンソン首相で保守党の空中分解進む恐れ

EU離脱交渉の膠着を受けて支持率が低下した保守党の執行部は、ジョンソン首相という強烈な個性のもとで挙党体制を演出し、人気を回復させる狙いがあったとみられる。ジョンソン首相就任後、20%台まで低迷していた保守党の支持率は35%程度まで回復し、一定の効果は達せられている。

しかし下院の重鎮が多かった造反議員を除名処分にするといったジョンソン首相の強権的なやり方については、保守党内からも批判の声が出てきている。主要閣僚であるラッド雇用・年金相がすでに辞任・離党を決めたが、報道によると閣内でさらなる辞任の動きがあると噂されているようだ。

このように、ジョンソン首相の強硬路線は綻びが見えはじめている。議会を制することができなかったばかりか、今後身内からも造反が相次ぐ事態となれば、首相の保守党内での求心力は急速に低下する。もっともその強気の言動が人気の源泉でもあるため、首相は直ぐに戦略を変えることもできない。

ジョンソン首相は今深刻なジレンマに直面している。ジョンソン人気がこれからも続くなら総選挙でも保守党は議席を増やせる見込みがある。ただ総選挙の実施時期が遅れる見通しになったことで、むしろ保守党が空中分解するリスクが大きくなってしまったように筆者には感じられる。

あと1回の延期がEUの最後の温情か

日々刻々と情勢が変わるが、現状ではジョンソン首相が、10月17日のEUサミットで議会の意向通りに離脱の延期を来年1月まで延期することを要請せざるを得ないだろう。EUもノーディールを回避するためにこれに応じるとみられる。直後に総選挙を実施することを延期の理由に挙げれば、延期の整合性がより高まるかもしれない。

とはいえ、EUがいつまでも英国の決められない政治に付き合ってくれるか定かではない。当初の離脱の期限(ロンドン時間18年3月29日午後11時)から1年という節目を理由に、3月末までの離脱延期を容認する可能性もある。ただ延期はこれで最後だというスタンスをEUも強めると考えられる。つまり温情はあと1回だ。

その後、11月にも予定されている総選挙で野党連合が勝利すれば、国民投票再実施に向けたEU離脱の撤回に向けた動きが加速する。与党が勝利すれば再延期によって定められた期日での離脱をいよいよ余儀なくされる。その場合、通商面で最低限の合意を結んだうえで離脱(いわゆる管理されたノーディール)できるかがカギになる。

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