保育園通いは親も育てる

続いて、保育園通いがお母さんに及ぼす影響についても見てみましょう。図表3は、お母さんのしつけの質、ストレス、そして幸福度に対する保育園通いの影響を示しています。

一番上のグラフによると、4大卒のお母さんのしつけの質に対する影響はほぼありません。一方、高校を卒業していないお母さんを見ると、効果量は0.58と、大幅にしつけの質が改善されていることがわかります。

真ん中のグラフは、子育てストレスに対する影響です。ここでも4大卒のお母さんに対する影響はほとんどありません。一方、高校を卒業していないお母さんの子育てストレスを0.63も減らしています。

そして一番下のグラフが示しているのは、幸福度に対する影響です。4大卒のお母さんに対する影響はないものの、高校を卒業していないお母さんの幸福度を0.54とやはり大幅に改善しています。

働きやすさを除くと、お母さんに対する影響というのは、政策議論ではもちろん、学術研究においてもあまり注意が払われてきませんでしたが、私たちの分析では、お母さんに対しても非常に好ましい影響があることがわかりました。

「子ども好き」でも24時間一緒はストレス

なぜ、特定の家庭環境の子どもの多動性・攻撃性が減少し、行動面で大きな改善が見られるのでしょうか。

まず考えられるのは、保育園で行っている教育の質が高いということです。保育士さんは訓練を受け、経験も積んだ専門家です。すでに見たとおり、高校を卒業していないお母さんの家庭では、しつけの質が低くなってしまう傾向があるため、保育園で過ごすことで子どもにとっての環境が大幅に改善されます。これが最終的には、子どもの行動面の改善につながったのでしょう。

もう一つ考えられるのは、お母さんのしつけの質の改善を通じた間接的な影響です。イクメンが増えたといっても、やはり子育てはお母さんの仕事とみなされがちです。子どもが保育園に通っていない場合、お母さんが四六時中子どもの世話をすることになりますが、いくら子ども好きでも24時間一緒にいると大きなストレスになりえます。もちろん、保育園を利用するということは、お母さんは外で働かなければならないのですが、それを考慮に入れても、子育てストレスが下がる可能性があります。