「入社2年目に基本給が一律で下げられた。耐え続けた」

どのような背景があったのか。当事者たちはこう話します。

「最初に就職した会社を退職し、やりがいを重視して転職しました。その仕事は、正社員ではなかったので、低収入のため生活をしていくのが厳しく、結局、正社員に戻るための再就職活動をしました。でも正社員の仕事が見つからず、1回レールを外れてしまうと、戻るのが難しいことに気づきました」(40代前半・事務)
「当時は『自分探し』という言葉が流行っていました。好きなことをやりたい、会社の歯車になるのはよくない、と思って一生懸命考えながら、生きてきました。その結果、やりがいを求めて正社員を離職した後には非正規職しかなく、その後の再就職は大変だった」(40代前半・事務)
「今では、気軽にエージェントを使って転職活動する人が増えていますが、当時は転職活動が容易ではありませんでした」(40代前半・事務管理)
「厳しい時代だったので、2年目に基本給が一律で下げられてしまいました。会社側から十分な説明がなかったことに対して本当に怒りを感じ辞めたいと思いました。でも、氷河期が長く続いていて、転職が難しいと感じ、耐え続けました」(40代前半・管理)

今のように転職活動のためのサービスやノウハウに関する情報が少ない時代、転職しようと思っても正規での中途入社は難しく、就業継続をしても基本給の引き下げなどの負担を強いられることが少なくなかったようです。運よく、正規雇用で再就職ができた女性でも、その後多くの苦労があったことが感じられます。

3:人生の折り返しの年齢「キャリアの再構築をどうするか」

就職氷河期世代の女性たちは、すでに年齢的に30代後半から40代前半を迎えようとしています。人生100年時代と考えれば、いわゆる人生の折り返し(あるいは少し手前)の年齢とも言えるかもしれません。

前述した通り、就職氷河期世代の女性たちは、就職活動という社会人のスタート時点だけでなく、新卒として入社した後も、さまざまな苦労に直面してきました。他の世代に比べて思い通りのキャリアを描けなかったことから、妥協や諦めの気持ちを持っている女性も少なくないと想像します。

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アメリカの組織心理学者であるエドガー・H・シャイン博士は、キャリアを形成する上で、個人が外部環境の変化に関係なく、最も大切にしている動機・能力・価値観や欲求などの自己概念の一要素を「キャリア・アンカー」と表現しています。

アンカー(Anchor)とは、「船のいかり」のことで、ここでは、キャリアを形成するためのよりどころを示しています。シャイン博士の著書『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう』(白桃書房)によれば、キャリアをより納得できるものにしていくためには、まずは自己を分析した上で将来の計画を立て、自分でキャリアを積極的に管理することが重要であることなどが指摘されています。