「なぜ介護をされなければいけないのか」が理解できていないために拒否している場合は、介護の意味をわかりやすく伝えることが重要です。「明日、デイサービスに行くとき、キレイにしていってみんなに褒めてもらいましょう」といった感じですね。

「ほかにしたいことがある」ので拒否している場合は、何がやりたいのか、何を気にしているのかを聞き出し、まずはそちらを解決しましょう。誰だって、トイレを我慢しているときにお風呂に入れといわれても困ってしまうのは当然です。

「イヤな記憶がある」ため拒否している、例えば何回もトイレを失敗するうちに、トイレに行くのがイヤになったような場合には、トイレに花を飾るなど、少しでもイヤなイメージを払拭するように努めましょう。

▼「浮気しただろう」と配偶者を責めだす

「自分はないがしろにされている」という思いから、周囲につらく当たる「嫉妬妄想」という症状になることもあります。本人の中では事実として認識されているので、否定してもさらに怒らせてしまいます。

本人が強く主張している間は、「困りますね、心配ですね」と否定も肯定もしない対応で、その場をやり過ごしましょう。

そのうえで、普段から「あなたは、大切な存在です」ということを、しつこいぐらいに伝えることが重要です。味噌汁の味付けをしてもらったり、新聞を取りに行ってもらうなど、些細なことでも役割を持ってもらい、そのことについて感謝している、一緒にいられて嬉しいと何回でも言うようにすると、本人の承認欲求が満たされて精神状態が安定しやすくなります。

外出する際には、どこで誰と会うのかを先に伝えておき、外出先からも「買い物が終わったので、これから帰る」と報告を行うなど、なるべく安心してもらえるように心がけましょう。

症状が治まらない場合は、専門医に相談して、精神状態が安定するような薬を処方してもらうことをオススメします。

▼悪質商法に引っかかってしまった

残念ながら、認知症の高齢者を狙った悪質商法を行う業者は少なくありません。少しでも被害を起きにくくしたうえで、被害に遭った場合も損失を最小限にするように手を尽くしておきましょう。

まずは自宅に必要以上の現金を置かないこと。通帳やキャッシュカード、実印など重要な物も家族が管理し、本人の手の届かないところで管理するようにしましょう。必要に応じて「成年後見制度」や、社会福祉協議会が提供している「日常生活自立支援事業」を活用するとよいと思います。

もし悪質商法の被害に遭ってしまったら、まずは業者に連絡してクーリングオフができないかどうか交渉しましょう。業者に誠意のある対応をしてもらえない場合は、「消費者ホットライン(電話番号は「188」)」に連絡して、相談に乗ってもらいましょう。

また地域包括支援センターでも、悪質商法の被害についての相談を受け付けているので、必要に応じて連絡してみましょう。

(構成=山野祐介)
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