拝金主義がまかり通っているオリンピックの意義

毎日社説は「(山下会長は)レスリングやボクシングなど国内で相次いだ不祥事により失ったスポーツ界の信頼を回復すべく『〈高潔性〉の充実に取り組んでいきたい』と意欲を見せていた」とも書き、「そうした不祥事がどうして起きたのかを思い返してほしい。競技界内部で、不透明な組織運営がまかり通ったことが原因だった」と主張する。

「競技界内部の不透明な組織運営」。要は競技団体という組織が閉鎖的だったのだと思う。オリンピックという4年に一度の祭典に参加するために、各競技団体をまとめ上げるのが、日本オリンピック委員会(JOC)の役目である。そのJOCが理事会を非公開にするようでは日本のスポーツ界に悪影響を与える。

巨額が右から左に動くオリンピックでは、拝金主義がまかり通っている。本当にそれでいいのか。だからこそ、JOCには透明性を維持し、閉鎖性を排除する役割が期待されている。

山下新会長の「改革」の初めが理事会の非公開

次に8月26日付の朝日新聞の社説を見てみよう。

「JOCには国などから多額の補助金が支給され、理事の多くは各競技団体の幹部だ。そうした公益性の高い組織と『公人』というべき理事らが、密室でなければ議論ができないという。そんな旧態依然とした意識で、人々の理解を得られると思っているのだろうか」

JOCの公益性については沙鴎一歩も指摘した。朝日社説はJOCの密室性を「旧態依然とした意識」だと形容するが、JOCの閉鎖性はこの旧態依然の意識に由来するのだろう。

朝日社説は書く。

「竹田恒和前会長には、東京五輪招致をめぐる贈賄疑惑が浮上している。だがJOCはおざなりの調査をしただけで、説明責任を果たそうとしない竹田氏をいさめることもしなかった。結局、社会の信頼を失い、五輪直前の会長交代という異例の事態を招いた。かわって登場した山下氏の『改革』の初めが理事会の非公開とは、何をかいわんやだ」

竹田前会長に厳しく忠告しないJOCはやはり、組織としてのあるべき姿を見失っている。

沙鴎一歩と違い、朝日社説は交代した山下会長も攻める。そこが朝日社説らしい。見出しも「JOC理事会 議論閉ざして失う信頼」で、これも朝日社説らしさがにじみ出ている。