対処が早ければ健常な状態に戻すことも十分可能

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」などの脳血管障害などにより、その周囲の神経細胞がダメージを受けて発症します。症状はダメージを受けた部位により異なり、判断力や記憶は比較的保たれている一方、言語障害が目立ったり、意欲や自発性がなくなったり、感情の起伏が激しくなる症状が見られます。発症後も脳出血や脳梗塞の再発のたびに階段状に症状が進行することもあります。

前頭側頭型認知症は脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が壊れていく病気です。「ピック球」というかたまりが観察されるケースが多く、「ピック病」とも呼ばれます。芸術家や自由業、自営業の人などに多く、興奮しやすく衝動的になり、周囲に合わせられなくなります。よく銀行や病院の窓口でキレて怒鳴り散らしているお年寄りがいますが、前頭側頭型認知症の可能性があります。ただこの病型は少量の向精神薬を使うことで通常の社会生活を保つことができます。病院に連れていくまでが大変なのですが、医療の力が一番発揮できる認知症とも言えます。

以上の分類はあくまで便宜的な記号のようなもので、実際には加齢にともなって複数の要素が混じりあい割合が変化していきます。

素人目には認知症でも、実際には甲状腺機能低下症や正常圧水頭症で、内服治療や外科手術で改善できることもあります。それを鑑別するのが医師の役割。認知症診療では必ずCTやMRIなどの画像診断や血液検査により、治る認知症を見逃さないことが大切です。

認知症の症状が一部に見られるが、日常生活に大きな支障がない状態をMCI(軽度認知障害)と呼びます。対処が早ければ健常な状態に戻すことも十分可能。本格的な認知症化を防ぐためにも家族が異変に気づき認知症に詳しい医師に相談することが大切です。

▼軽度認知障害だったら「治る」ことも

(構成=久保田正志)
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