360度ブドウ畑に囲まれたワイナリーを今年9月にオープン

——受賞もそうですが、より多くの消費者に飲んでもらうには、これからのマーケティングが重要になってきますね。

そうです。これからは、特にマーケティングが重要だと考えています。メルシャンだけでなく、ほかの日本ワインも多くの国際コンクールで受賞してきています。それを業界の人間は知っているけれど、まだ多くのお客様が知らない。賞のすごさも伝わりきっていない。

まず、こういうところから伝えることで、「日本のワインはすごいんだな」とお客様に思っていただけるようにします。2017年より輸出を開始した香港では同年よりホテルで日本ワインを置いてもらうようになっていますが、さらにエポックメーキングとなる地域の提携も進めたいと考えています。そこでの評価が日本に還流して、日本でのマーケティングにつながっていくといいなと思っています。

また9月21日には、長野県上田市に「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」がオープンします。ここは、ワインを製造するだけでなく、テイスティング・カウンターやワイン・ショップを設け、年間を通じてお客様に来場してもらえる施設です。360度ブドウ畑に囲まれたワイナリーで、日本ワインの価値を国内外のお客様に届けたいと考えています。

メルシャンの長林道生社長
撮影=門間新弥
メルシャンの長林道生社長

——もっとワインを広めていくためには、やはり若い人たちに飲んでもらうことが大事になってくると思います。

現在、ワインを飲んでくださっているのは、男女問わず40代、50代がコアになっています。これを若い人たちにも広めようと、氷を入れるなど新しい飲み方も提案しています。簡単ではないけど、そこをやっていかないと、日本ワインも含めて、ワインの未来はないと思いますけどね。ただ、若い人はワインを飲む機会も少ないような気がします。

私がメルシャンに移るときに、大学生の娘にメルシャンの印象を聞いたら、ワインと結びつかないんですよね。ワインのトップメーカーでありながら、ワインを印象づけられていない。だから若い人にもワインがなじみがないのかもしれません。

その娘とも最近は一緒にワインを飲むようになりましたが、「おいしいね」って言ってますよ。飲む機会を広げれば、若い人もワインを受け入れてくれるし、もっと飲んでくれるんじゃないかと可能性は感じています。それを実現していくのが、私の役割でもあると再認識しているところです。

(聞き手・構成=前屋 毅)
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