評価の高まりの流れは、日本ウイスキーに似ている

日本ワインの評価の高まりの流れは、日本ウイスキーに似ています。私は15年ほど前にウイスキーのマーケティングをやった経験がありますが、いまの日本ウイスキーの人気はその頃には予想できませんでした。大きなきっかけはハイボールですが、日本ウイスキーが海外でたくさん賞をとったことも影響しているはずです。海外で評価されて初めて自分の良さに気づくようなところが、日本人にはありますからね。

ワインも同じで、フランスなどの伝統国に比べると日本のワインは質が劣るという先入観もあったけれど、海外で評価されて国内の評価が変わりはじめています。

——品質が良くなった理由はなんだとお考えですか。

フランスワインに必死に近づこうとしていたんですが、やはり季候も土壌も違う。日本らしいところをねじ伏せて、追いつき追い越せと躍起になっていました。それが間違いだった、ということに気づいたことが大きいんじゃないでしょうか。

メルシャンでは1998年にシャトー・マルゴーの支配人だったポール・ポンタリエ氏を醸造アドバイザーに迎えたときにも、「日本らしさを追求すべきだ」と指摘されたこともあって、かなり発想が変わってきています。

撮影=門間新弥
左から「城の平 オルトゥス 2013年」「椀子 オムニス 2015年」「桔梗ヶ原メルロー シグナチャー 2014年」「藍茜 2016年」「山梨甲州 2017年」「岩出甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ 2017年」「新鶴シャルドネ 2017年」。

選果台を導入して不良果を徹底的に除去

その一例として塩尻市では、その「らしさ」を追求するために、1999年には自主管理畑を設置して、従来の棚式ではなく、力強く凝縮感のある味わいとなる垣根式でのブドウ栽培をスタートしています。同時に、契約栽培農家との提携も深めて、ブドウの品質を高めるための知見をお互いに深めてきてもいます。

さらにブドウの品質向上を目指して収量制限、着果量や糖度の計測にも取り組んできました。醸造面でも、2002年からは木桶発酵を導入し、選果台を導入して不良果を徹底的に除去しています。不良果が残っていると、やはり雑味につながりますからね。

そうした結果が、世界的に評価されることにつながってきているのだと思います。