「人間くささ」こそが重要になる
うまくいかない上司の典型は、ひとことでいうと「人間くさくない」、ということ。従業員満足度の調査で意外とスコアが低く出るのは、このタイプがリーダーの組織です。
初めて役職が付き、肩に力が入っているという場合もありますし、意識することなく生来のポジティブさで突っ走っている人もいます。いずれにせよ、それでは部下との距離は縮まりません。繰り返しになりますが、リーダーになったら、あえて弱みを見せる、といったぐらいの適当さが必要なのです。
例えば、ある幹部はこんなことを言った時、みんなの心を一気につかみました。
「営業時代、あまりにしんどくて、客先に行かず、山手線を何周かした」
誰でもこれに近い経験はあるのではないでしょうか。私も恥ずかしながら、大阪の環状線をまわったことを思い出しました。
真面目でキッチリしているだけでは、部下との距離は縮まりません。リーダーに必要なことは、“賢さ”でも“ソツのなさ”でもなく、「人間くささ」。人間くささとは、「弱さ」である。自分の弱さを知り、その弱さを隠さないことも、リーダーには必要なのです。
弱みを見せられるのも強さ
以前、有名な合気道の師範と会話をする機会がありました。日本屈指の方なのですが、次のような質問をしてみました。
「ヤンキーに絡まれたらどうしますか?」
師範は言いました。
「怖いので、全速力で逃げる」と。
この返答には驚きました。でも、聞くとこういうことでした。
「想定外のことをする人は、やっぱり怖い。なので、全速力で逃げる」と。
でも、しつこくさらに尋ねてみました。「もし殴られたらどうするのか」と。するとこんな返答でした。
「恨みを買わない程度の最小限の防御だけをして、全速力で逃げる」と。
どうでしょう。とても人間くさく感じませんか。お弟子さんたちもきっと人間味を感じていることでしょう。
よく言われることですが、やはり、こういうことです。
「本当に強い人ほど、怖がりであり、小心者だったりする」
だからこそ、弱みを見せることで、ぜひ部下との距離を縮めてみてください。きっと、部下はこう感じるでしょう。
本当にすごい人だから、弱さを見せられるのだ、と。
これもリーダーとしての処世術です。