「望まない圧力」にのみ込まれない人になる

いままで見聞きしたことのない状況に直面したときに、しっかりとした自分の考え方に添って物事をとらえ、行動していくうえで何よりも求められるのは正しい知識だ。新聞やテレビが自ら信頼性を放棄してしまったなかで、本来ならばアメリカのように新しいメディアが台頭してこなければいけない。

望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラー『同調圧力』(角川新書)

日本でも新しいメディアがようやく注目を集める状況が生まれている。早稲田大学ジャーナリズム研究所のプロジェクトとして2017年2月に発足し、1年後に独立した「ワセダクロニクル」は、調査報道を専門とする特定非営利活動法人(NGO)。編集長は朝日新聞出身だ。運営資金は寄付金でまかなわれ、発足と同時に開始されたクラウドファンディングでは4カ月で550万円超が集まった。

日本では企業をはじめとするさまざまな組織のなかに、家族の絆にも似たウエットな関係がもち込まれる手法が定着している。強い仲間意識のもとで、お互いを支え合う構造に居心地のよさを覚えるほど、自分なりの倫理観を貫きながら行動することが難しくなる。和を乱す、信頼できない人間というレッテルを貼られてしまうからだ。

自分が何をしたいのか。何をすることが正しいのか。ただ何となく生きるのではなく、強い覚悟と自尊心を貫けば、望まない圧力にのみ込まれることもない。

そのためにも、正確で公正な情報を届けてくれる、信頼に足るメディアを自分自身で選び、確保してほしい。時間と労力を要する作業になるが、無数の情報が飛び交うネット空間から自分の力で探し出すことが、頼もしい道しるべになるからだ。

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