ラグビーW杯や2020東京五輪による景気浮揚効果は……

こうした流れを考えると、10月1日に消費税率が上がる頃は、前回の増税時と違って、インバウンド消費や企業業績の追い風もなく、むしろ、景気は厳しい状況にある中での増税となる可能性が高いのです。

9月20日から始まるラグビーのワールドカップや、来夏のオリンピックに景気浮揚を期待することもできます。しかしオリンピック関連の「建設」は、新国立競技場を含めもうかなりの部分は出来上がっているように見えます。

ワールドカップやオリンピックによる訪日客増は、もちろん景気にプラスに働きますが、一時的なものにとどまる公算が大きく、GDPで550兆円規模の日本経済に与えるインパクトはそれほどないのではないかと考えられます。

追加の金融政策を行う余地はほとんどない日銀

「消費税10%」による日本経済・景気への悪影響は避けられません。これまで、その背景を述べましたが、もうひとつ「決定打」があります。

前回、2014年の増税時には、日銀の「異次元緩和」が有効に働いていたのです。2013年度から始まった異次元緩和ですが、その効果がたしかに表れていました。

しかし、現状は……。日銀が追加の金融政策を行う余地はほとんどなく、その効果も以前ほど期待できません。表は、日銀がコントロールできる資金の「マネタリーベース」や短期金利、長期金利の数字ですが、マネタリーベースは異次元緩和開始当初は年率40%を超える伸びでしたが、昨年度は1ケタ台です。金利も、長期金利・短期金利も、ゼロかマイナスに沈んでいます。

日銀がコントロールできる資金の「マネタリーベース」や短期金利、長期金利の数字

はっきり言って、今回の増税時に、日銀に打つ手がほとんどありません。せいぜいETF(上場取引型金融商品)を通じた日本株の買い増しくらいではないでしょうか。この日本株の買い増しも、批判が大きいことから、実際にやれるかどうかもわかりません。

なぜ所得税や法人税ではなく、消費税引き上げをするのか。その理由を財務省はウェブサイトで次のように述べています。

〈今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます〉

現状の財政状況や高齢化での社会保障の伸びを考えると増税は避けられないでしょう。しかし、景気減速懸念が強い中での消費税増税後の日本経済はかなり厳しい。それが私の結論です。

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