インバウンド消費と企業業績の拡大があったから助かった

前回の増税時には、「救い」がありました。

ひとつは、インバウンド消費です。表の「消費支出」の右側に「小売業販売額」が載せてあります。家計の消費支出に比べて、小売業販売額の数字のほうが比較的伸びが高いのがわかります。

「消費支出」と「小売業販売額」

なぜ、家計の消費支出と小売業販売との伸びが違うのかには、2つの理由があります。

ひとつは、GDPに密接な関係のある「家計の支出」に小売以外の消費も含まれるから、ということです。小売以外の消費とは、例えば、通信費や医療費、学費といった費目です。二つ目の理由は「インバウンド消費」です。訪日外国人は家計の消費支出の対象ではないのですが、小売業販売額の対象となるのです。このインバウンド消費が伸びたのです。

前回の消費税の増税があった頃から、中国人客を中心とする「爆買い」が顕著となり、それが、東京や大阪、京都、福岡などのドラッグストアや百貨店を大いに潤しました。

表2の2015年度の「小売業販売額」や「全国百貨店売上高」(前年比)の数字を見ると、家計の支出が激しく落ち込む中、小売業、特に百貨店は前年比で販売額を伸ばしています。2015年が爆買いのピークだったのです。

小売業販売が好調のもうひとつ理由は、グローバル展開する製造業の業績の拡大でした。家計の消費が落ち込んでいた時期に、企業業績が景気を支えたのです。

インバウンド消費の他に景気が拡大したもうひとつ理由は、グローバル展開する企業の業績の拡大でした。家計の消費が落ち込んでいた時期に、企業業績が景気を支えたのです。

「爆買い」は終わり、米中摩擦で企業業績も低下の危機

今年10月1日の消費税率上げは8%→10%と2%分のアップであり、前回の3%アップよりは規模が小さいです。国はポイント還元などの対策も打っているため、そのインパクトは小さい可能性もありますが、前述したような「爆買い」はすでになく、米中摩擦などの影響により、グローバル企業を中心に企業業績は明らかに低下気味です。

訪日客の「爆買い」はなぜ大幅に減退してしまったのか。これは中国が高額品への関税を強化したことや、今年1月からネットによる転売への課税を強化したことが原因です。

以前は、大きなスーツケースやキャリーケースを引っ張る中国人観光客の姿を東京や大阪の街角でよく見かけました。今でも、中国人観光客の姿は多く見かけますが、はち切れんばかりの荷物を持っている人を街角で見かける回数は減りました。実際、一部の大手化粧品メーカーや健康食品販売会社のインバウンドの売り上げは、昨年暮れあたりから勢いを失っています。

企業業績の低迷についても簡単に触れておきましょう。米中摩擦の影響で、中国経済が減速し、国内の企業業績にも影響が出始めているのです。複数の経済指標をウオッチしていると、残念ながら今後もその傾向は続きそうです。