きちんと作品を見ていない河村たかし市長が口火

口火は河村たかし・名古屋市長だった。2日に展示を視察した後、慰安婦像について「どう考えても日本人の、国民の心を踏みにじるもの。いかんと思う」として、作品の展示を即刻中止するよう大村県知事に求めるといい出したのだ。

だが、『週刊新潮』(8/15・22号)で、美術評論家の藤田一人は、オープニング前日のレセプションで、「河村さんは『燃えよドラゴンズ!』の替え歌を気持ちよさそうに歌っていました。つまり、プレビューに呼ばれても、きちんと作品を見ていない。その程度の問題意識だったわけです」と話している。

本人は気付かず、誰かに入れ知恵されたのであろう。菅官房長官も2日の会見で「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と口を出した。

大村県知事は河村らに「憲法違反の疑いがある」と抗議している。

「実行委員会や津田大介芸術監督は未熟すぎます」

中止に至った直接的な要因は、県庁にかかって来た大量のの抗議話やFAX、メールで、その中には「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」という、京都アニメーション放火事件を想起させる脅迫まであったからだという。

津田は開会前、「感情を揺さぶるのが芸術なのに、『誰かの感情を害する』という理由で、自由な表現が制限されるケースが増えている。政治的な主張をする企画展ではない。実物を見て、それぞれが判断する場を提供したい」と語っていたが、判断する場を自ら閉じてしまったのである。

当然、津田に対する批判はネット上でも燃え上がった。批判の内容は、宮台真司・首都大学教授が朝日新聞(8月10日付)でいっている、この言葉に集約されると思う。

「今回の中止は脅迫による混乱が理由で、言語道断です。毅然(きぜん)とした態度を貫かないと、脅した者勝ちになる。フランスのシャルリー・エブド紙襲撃事件では、マスコミも政治家も識者も『テロに屈するな』と叫んだはずです。

警察と連携、別会場でボディーチェックなど対処法を編み出すべきなのに、それをせず3日間で中止したトリエンナーレ実行委員会や津田大介芸術監督は未熟すぎます」