「地元の人」とのつながりを大切にする

【有坪】就農前には就農支援機関との面談もあったかと思います。どういうことをお話しされたか覚えていますか?

【高尾】基本的には、自分がシミュレーションしていたことをそのままお話ししたと思います。それに対して、ハウスを建てようと思ったら、一棟でいくらかかって、そのお金はどこで借りられるか。そのときに使える補助制度には、どんなものがあるのか。そういった具体的な話をもらいました。

【有坪】そうしたお話をうけて、どう感じましたか?

【高尾】痛感したのは、自己資金が不足気味だということ。だから、栽培計画も厳しくシミュレーションするべきだと思いましたし、経費もそぎ落としたほうがよいだろうと考えました。

具体的には、いろいろなものを業者さんから直接買うのではなくて、だれか要らない人からもらう必要があるし、スイートピー栽培では必須のハウスもなるべく業者さんを使わずに建てたほうがいい。それなら、そのノウハウも教えてもらう必要があるなということを感じた。

だからこそ地元の方々とのつながりをおろそかにしてはだめだと、人間関係を大切にしてきました。実際、ハウスを作るのがすごく上手な先輩農家さんがいて、すごく助けられたこともあり、人間関係は重要だと実感する毎日です。

画像提供=高尾英克氏
高尾英克氏のスイートピー畑

「失敗を織り込んだ」計画を立てた

【有坪】2年間の研修を経て、3年目で実際に就農しました。順風満帆だったのでしょうか?

【高尾】少しややこしい言い方になりますが、順風満帆ではありませんでしたが、予定通りではありました。どういうことかというと、失敗を織り込んだ計画を立てていたということです。

まわりのずっとスイートピー栽培をしている農家さんに「どのくらいの収量になりますかね」って聞いたところ「やる気さえあれば、僕らが100だとしたら70くらいは採れるだろう」って言われました。

でも、僕はそんな甘くはないはずだと、50の収量で計画を立てました。実際に収穫量が50だったので、「やっぱり」とは思いましたが、悲観的になることはありませんでした。

【有坪】もし70で考えていたら、資金計画などを根本的に見直さなくてはならなくなり、「本当にやっていけるだろうか」と不安になったかもしれませんね。でも、なぜ収量が50にとどまったのでしょうか?

【高尾】最大の問題は、土地だったと考えています。ちょっと耕しただけでゴロゴロと石が出てくるような農地で、しかも土壌は強い酸性。今は根気よく耕し、土壌改良もしたかいあって収量も増えましたが、当時はスイートピーに限らず、どんな野菜でも育成は難しかったでしょうね。