日本の課題は「不動産」と「アドバイザー」

1についてはこの後述べますが、2、3、5、7、8は、日本が物理的に比較的満たしている分野です。課題は6と9。全国でプライベートに所有されている別荘や行政が所有する文化邸宅、企業の迎賓館などを宿泊施設や特別体験の場として開放できれば、ユニークな旅先の幅が広がるでしょう。

特に9の、人間味があり深い知識を持ったデジタル・リテラシーの高い旅のアドバイザーや案内人については、育成と能力に見合った報酬の確立が急務の観光人材の一つと言えるでしょう。事実このようなよいガイドがいる街には、遠方でもハイエンドなトラベラーが訪れています。

市場が注目する「変容の旅」

このようなトレンドを受け、市場は新たな旅のあり方に注目しています。それが「トランスフォーマティブ・トラベル(Transformative Travel=変容の旅)」(以下TT)です。

雑誌『VOGUE』が組んだ「なぜTTが2017年のトレンドになるのか?」という特集では、TTにシフトしてきた社会状況を以下のように説明しています。

「TTは次の旅の進化形です。これまでのトレンドだった『体験型(Experiential Travel)』と似ていますが、そこからもう一歩進んだもの。ラグジュアリートラベラーの旅のモチベーションは、視野の拡大、自己反映、自己啓発、そして自然や文化とより精神的なレベルで親密に対話することにシフトしてきています」というTTコラボレーティブ社のホパート代表の言葉を紹介しています。

その理由として、「今日の文化は、デジタルデバイスとスピードに急かされていて、我々は自分自身から、他者との関係から、そして自然や文化から切り離されてしまっている。そのような状況でこそTTで自分の内面を旅することが必要だ」と主張しています。