自己実現や自己変容を求めるようになった

またアメリカの観光産業の専門ニュース『スキフト(Skift)』も、「TTの台頭」という記事の中で、TTを2018年のメガトレンドの一つに挙げています。このような自己実現や自己変容への意識のシフトは、世界経済の動きによるものだとしています。

たとえばアップル社は、ハードウェアそのものや効率化という体験を販売しているのでなく、「トレンドに精通した最適で未来志向の生き方への約束を売っている」のだと。また、パタゴニアも服や冒険心を売っているのでなく、「自然環境への情熱と責任に対する精神を売っている」と。

このように、企業の製品づくりも「単なる商品や体験を可能にするものとしてでなく、よりよい自分を表現する不可欠な要素として位置付けている」と言っています。そのような時代背景を受け、人々は自身が精神的、そして感情的により高いレベルで満たされる旅を求めているのです。

ハイエンドトラベラーのモチベーションとなっている「自己実現欲求」をマズローの「欲求五段階」説に当てはめてみると、それは五段階の最上位に当たります。四段階目の「尊厳欲求」が、「他者から認められたい、尊敬されたい」という他人からの評価を意識したものであるのに対し、自己実現欲求はさらにその先の「自分の能力を引き出し、創造的活動がしたい」と思う欲求です。ハイエンドトラベル市場では、自らの人生の目的に影響を与えるような、自分を高める深層体験をすることがより重要になってきているのです。