※本稿は、山田理絵『グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル 発想と創造を生む新しい旅の形』(講談社)の一部を再編集したものです。
旅の話はビジネスの場での評価につながる
「今度の休暇はどちらに?」という会話は、欧米社会では日常的にビジネスの場でも行き交います。「旅の話題は話すほうも聞くほうも旅している気分になれて、いい気分転換にもなる。どんな旅を選択し、創造するかはその人自身の嗜好や考え方を表すから、ビジネスの場で相手の人となりを知るためにも効果的だよ」とある経営者からうかがいました。
冒険心に溢れ、洗練され、トレンドコンシャスで本物で珍しく、人がなかなかしたことのない魅力的な旅を選択できることは、その人のセンスの証明になります。目が利き、エクスクルーシブな旅にアクセスする人脈も資金も時間もあり、生まれ変わるような経験をドラマチックに伝える話術を備えているということが、その人の評価に繋がるのです。
「口コミ」でホテルやレストラン情報を手に入れる
これまでの研究の過程で、世界のハイエンドトラベラーがどのように旅の情報を得ているのかを調べてきました。その中で圧倒的に多かった答えは「口コミ」でした。「類は友を呼ぶ」ように、ユニークで豊かな旅をしている人の周りには、似たような興味を持った友人がいて、自然と情報が入ってくるのだそうです。
おすすめのホテルやレストラン情報を得たり、時には現地の友人を紹介してもらえてインサイダー情報も入る。こういった口コミのほうが情報の質に信頼性があり、失敗も少ないと言います。本書で取り上げているデスティネーションも、揃って口コミがマーケティングの源泉だと言っています。特にハイエンドビジネスでは口コミの力が絶大です。
世界のラグジュアリートラベル市場で、アメリカ人旅行者は最も経済効果があると言われています。カナダに拠点を置くラグジュアリートラベル・アドバイザーのレゾナンス(RESONANCE)が、2016年にアメリカ人旅行者の世帯収入上位5%に当たる1667人を対象に調査を行いました。
それによると、世帯収入は2000万円以上、または純資産が2億2000万円以上で、さらにトップ1%に当たる724人は、世帯収入がその倍以上、または純資産が8億8000万円以上にのぼることがわかりました。
また回数で見ると、一般的なトラベラー世帯が年に平均4.8回旅をするのに対し、上位5%は14.3回でビジネスとレジャーの比率は半々。つまりラグジュアリートラベラー1世帯が、一般トラベラー3世帯分の旅をしていることになります。