一部に非があることを認めて納得感を出す

筆者自身、このような提案をして、「ちょっと他の人の意見も聞いてみます」とやんわり契約解除を宣告されることがたびたびある。どんなに世間から叩かれても、トップや企業の非を絶対に認めないのが「危機管理」だという考えからだ。ただ、ガチガチに守りを固めて、無理筋の言い訳をしたところで、今回の吉本のように結局はたたかれて、ネガティブなイメージが何年もこびりつくだけだ。

イメージの悪化を最小限で食い止めるには、「一部非があることを認める」という戦略に基づいて、納得感のある回答をしたほうがいい。今回の岡本社長の場合であれば、筆者なら、以下のような「模範解答」を用意しただろう。

Q.「テープまわしとらんだろうな」と言ったのは本当か

「発言は事実で、彼らのことを信じられないことからつい出てしまった言葉です。ここまで嘘をつかれて”ふざけるな”という怒りもありました。そこに加えて、『いますぐにでも喋りたい』とかなり感情的になっていたので、“この調子ならこの話し合いも盗聴してSNSなどで公開するのでは”と不安になっていたこともあります。しかし、そんな不信感や不安があっても、吉本興業のトップとして不適切な発言でした。彼らに嫌な思いをさせて申し訳なかったと反省しています」

Q.「会見を開いたら連帯責任でクビ」と圧力をかけたのか

「圧力ではなく、怒りで頭に血が上ったことで出た叱責です。もちろん、クビというのは本気ではありません。嘘をつかれたことを根に持っている自分がどこかにいて、“嘘をついていたくせに、こちらの都合も考えずに勝手なことを言うな”という怒りもあったのだと思います」

このように徹底的に「恫喝=嘘をつかれた怒りによる失言」というところを強調すれば、今のように日本中がツッコミを入れるような事態にはなっていない。ということは、一部から出てきた「全部ウソ」「信用できない」というような批判もないので、吉本側の主張がさらに信憑性が増すというわけだ。