恫喝発言は認めて、真摯に謝罪するべきだった
だが、残念ながらこれらの目的は達成できなかった。どうすればよかったのだろうか。もし筆者が吉本のアドバイザーなら、岡本社長には「テープまわしとらんやろな」「会見したら連帯責任でクビ」などの発言を認めさせ、真摯に謝罪してもらうことを強く進言していただろう。
その目的は、語る言葉に説得力を持たせて、世間にこちらの話について聞く耳を持ってもらうためである。
言った、言わない、という泥仕合を繰り広げている中で、「自分は正しい」「相手は嘘をついている」を繰り返しても、世間は納得しない。むしろ、横柄、傲慢、独善という印象を与えてしまうだけだ。
ちなみに、こういう失敗は取材対応を弁護士が仕切った場合に多い。弁護士は日常的に、「非を認めたくない人」からの依頼を受けることが多いため、どうしても世間から見て滑稽で、無理筋な言い訳を押し通してしまう傾向があるのだ。
「嘘をつかれた」ことは武器にできたはず
「それにしたって、社長があんな発言を認めたら辞任は免れないぞ」と思うかもしれないが、実は吉本側にはそれを回避する大きな武器がある。それは、「嘘をつかれた」という点だ。
日本には「嘘つき」を徹底的に糾弾するカルチャーがあり、嘘を認めて謝罪しても、一度でも嘘をついた人はなかなか許されない。特に宮迫さんは過去の不倫疑惑で苦しい釈明を繰り返してきたことで、主婦層から「憎悪」の対象となっており、ネット上ではいまだにすさまじいバッシングを受けている。
つまり、このような「嘘」への怒りを刺激することで、「宮迫のように嘘ばかりついている人間には、あれくらいの厳しいことを言うのも無理はない」というコンセンサスをつくっていくのだ。
もちろん、岡本社長も完全に「無傷」ではない。謝罪するだけでなく、「カウンセリングに通う」「アンガーマネジメントなどの研修を受ける」など、怒りをコントロールする方法を身につけていくと宣言する必要がある。また、自身の発言が高圧的にならないよう、定期的に外部の査察を受けるなど、具体的な再発防止策も示さなければいけない。
こういう話をすると、「言いたいことはわかるけど、そんな提案は岡本社長など経営陣がのむわけがないのでは」と思うことだろう。その通りだ。おそらくのまなかったと思う。不祥事企業でも、このような作戦を承諾するのは10社あれば1~2社である。