20代と70代が一緒に働く職場の違和感

要するに「一億総活躍社会」「75歳定年制」とは、本来は職場で交わることのなかった(交わるべきではなかった)ような、世代の大きく異なる者どうしが接点を持つようになる、ということなのだ。50歳も年の離れた「現場の老兵」と「ピチピチの新人」が、なんの違和感も抱かずに一緒に仕事ができるのだろうか。

たとえば職人の世界であれば、年長者が若者に技術や経験を伝承するという意味でアリだろう。だが、ホワイトカラーの事務職の場合、かみ合わないことのほうが多いだろうと想像できる。

それこそ現在の45歳と25歳でも、こんなに常識や感覚が違うのだ。言うまでもないが、前者が45歳で、後者が25歳である。

「文字ベースの連絡はメールが基本」vs.「連絡はLINEやSlackが基本」
「電話がかかってきたらすぐに出ろ」vs.「電話は人の時間を一方的かつ暴力的に奪うクソツール」
「社内で尊敬できる先輩を見つけ、信じて付いていけ」vs.「尊敬できる人は社外にもたくさんいるから、幅広く交流して複数のメンターを持ちたい」
「SNSで仕事関連の情報を発信するな」vs.「SNSで仕事関連の情報を上手に拡散することこそ顧客のためになり、ビジネスの成長にもつながる」
「結婚は早くしたほうがいい」vs.「結婚するかしないかはそのときの状況次第。無理してまでするものではない」
「たとえ本意ではなくても、上司から言われたことなら全部やれ」vs.「自分の『正義』や『信念』を大事にしたい。納得できなければ上司の指示は聞かない」
「なんで名刺を切らすんだ! 名刺交換は人間関係の基本だぞ」vs.「名刺なんてオワコン。SNSがあればいくらでも他者と関係構築できる」

世代間の軋轢が深まる可能性

このような調子で、20歳程度の年齢差でもさまざまな「断絶」が発生するのだ。これが30歳差、40歳差、そして50歳差になると、どこまで話が通じなくなってしまうのだろうか。

「一億総活躍社会」「75歳定年制」などと政府主導で旗振りするのは結構だが、ビジネスの現場においてはこれまで以上に、世代が違うことによるコミュニケーション作法のズレ、仕事上の常識のギャップが生じる可能性がある。これを埋めていくような方策をシビアに考えていかなければならないだろう。

然るべき準備をしておかなければ、今後、間違いなく世代間の対立や軋轢(あつれき)が深まっていく。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」

・「一億総活躍社会」「75歳定年制」など、高齢者が長く働き続けることを前提にした社会を実現したいなら、職場で世代の離れた者どうしが感じるコミュニケーションギャップ、常識のズレについても皆が意識を向け、方策をシビアに検討するべきだ。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
バカほど「バタバタ」「要するに」と言う
自分の舌が"濃い味中毒か"を検証する方法
イタリア人が日本で必ずイタ飯を食べる訳
大人数の会議は"バカと暇人のもの"である
ヘラヘラと愛想笑いを続ける人生は惨めだ