スウェーデンの中央銀行は「e-クローナ」の流通を目指す
社会全体の効率性を考えると、キャッシュレス化は不可避だ。米国でもSNS大手のフェイスブックが独自の仮想通貨のコンセプトを公表した。その目的は、自社のプラットフォームを生かして決済ビジネスからの利得を手に入れることにある。
こうした変化は中央銀行にとっても無視できない。民間の仮想通貨の利用が増えれば、法定通貨による決済が減る可能性がある。そうなれば金融政策を通して通貨の価値を安定させ、金融システムの健全性を維持することは容易ではなくなるだろう。スウェーデンの中央銀行は法定通貨をデジタル化した「e-クローナ」の流通を目指している。マネーロンダリングの防止のためにも、法定通貨のデジタル化は急務といえる。
このように考えると、キャッシュレス決済の普及は世界経済全体での趨勢であることがわかる。わが国では現金への安心感があるからといって、モバイル決済などはひとごとだと片づけることはできない。徐々に、わが国でもキャッシュレス化は普及していくだろう。
「出遅れているから、多少の問題は仕方ない」ではダメ
企業に求められることは、老若男女を問わず、わたしたちが安心して利用できるシステムを構築することだ。不正アクセスによる被害の発生や、個人情報の管理に関する不安が顕在化するようでは、ユーザー基盤を固めることはできない。
世界全体で、IoT(モノのインターネット化)をはじめ、デジタル化の流れはよりスピードアップしていくだろう。そうした変化に適応するためにも、わが国企業はしっかりとした準備を進めなければならない。「中国や米国に出遅れているから、多少の問題は仕方ない」という言い逃れは許されない。
(写真=時事通信フォト)