2000万円問題に感じた2つの大きな違和感
こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。
6月3日、金融庁の「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」が問題になっています。今回はこのテーマについて、一緒に考えてみたいと思います。
報告書では、超長寿社会を踏まえると、公的年金以外に「老後資金2000万円(を貯蓄から取り崩すこと)が必要」で、それには長期的なライフ・プランを検討し、具体的なシミュレーションを行うことが重要であるとしつつ、「(現役期であれば)長期・積立・分散投資による資産形成の検討を」行うのが重要である、とされています。
2000万円という具体的な数字はやはりインパクトがあったのか、安倍首相は「平均値での乱暴な議論は不適切であった」とコメント、麻生大臣も不適切として報告書の受け取りを拒否しました。さらに、14日には同庁の三井秀範企画市場局長は「世間に著しい誤解や不安を与えた」として謝罪するに至りました。
私自身は報告書の記事を新聞でみたとき、すぐに大きな違和感を覚えました。
家計相談をしてきた立場として感じた違和感について、まとめてみたいと思います。
みなさんがこれからの“老後”を考える際のご参考になればうれしいです。
大きな違和感は2点です。
2.それを元に、リスクを伴う資産運用を促す表現であったこと
老後資金2000万円必要ですか? に対する答え
1.「老後資金2000万円」という具体的な数値を、公の機関が出したこと
「老後資金○○万円必要」というのは、雑誌などでよく取り上げられるテーマです。みなさんもいろいろな試算を目にしたことがあるのではないでしょうか。1億円とか、3000万円とか。実際に、そうした数値を目にして不安に思い、「老後資金3000万円必要と言われますが、(貯める自信がないので)不安です。3000万円ないとダメですか?」「老後資金として、私の場合はいくら必要でしょうか?」というご相談は珍しくありません。
私は決まって、2つのことを即答します。
「試算は、さまざまな前提を置いて計算されたものです。ご自身の前提とは異なるものですから、計算結果は気になさらなくていいと思います」
とした上で、「その前提の一つに寿命があります。寿命は誰にも分かりませんから、“正しい”老後資金は誰にも計算できません」と答えます。
つまり、せっかくご相談に来てくださっているものの、目の前のご相談者の「老後資金はいくら必要か?」の質問には答えられないことをはっきりお伝えします。