なぜそこまでリスク運用を促したいか
つまり、金融庁の報告書は個々の家計で数値はまったく異なるであろう老後資金について、具体的な数値を出したこと、さらにその数値はどうしたって計算できるものでないのに(前提次第で結果はいかようにも変わる)、公の機関であるにも関わらず、出してしまったことに、私は大きな違和感を覚えました。
もちろん報告書では前提条件を明記しています。しかし、数値を出せば、一人歩きするであろうことは、容易に想像できたはずです。逆にいうと、ちょっとうがった見方かもしれませんが、それすら考慮して、つまり数値のインパクトをあえて狙って、リスク運用を促したい思惑があったのではないかと、勘ぐってしまいます。
2.それを元に、リスクを伴う資産運用を促す表現であったこと
超長寿社会を迎えるにあたって、よく「資産寿命を伸ばそう」という言葉を聞くようになりました。正直、私はこの言葉が好きではありません。「生活のために、運用しましょう」と言っているように聞こえてしまうからです。
全員が運用する必要はない
リスクを伴う運用と言えば、FP(ファイナンシャルプランニング)の観点では、「余裕資金(当面使わないお金)で運用しましょう」「仮にゼロになっても、ライフプランを崩さないような金額(つまり、余裕資金)で行うことが大事」と、これまで鉄則として言われてきました。
一体、いつから「少額でも、(若いうちから)コツコツ運用しましょう」に変わってしまったのでしょう。積立を用いたからと言って、リスクが減る訳でもありません。
誤解のないように補足すると、運用をしたいと考える方が運用するのは、まったく問題ないと思います。私が強く違和感を覚えるのは、おしなべて「全員」に「運用しましょう」と促すような表現です。やはり、まじめな方ほどこの言葉を額面通りに捉えてしまい、不安に感じてしまうようです。「運用は苦手なのですが、運用しないといけないでしょうか?」というご相談者もいらっしゃいます。