老後の資産形成にはどんな選択肢があるのか。確定拠出年金アナリストの大江加代さんは「金融機関は『国の年金は頼りにならない』と自社の保険や投資信託を売り込んでいるが、金利が低すぎる商品や手数料がバカ高い商品は買ってはいけない」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

手でバツを作る女性
写真=iStock.com/takasuu
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日本人の不安を煽る金融機関の戦略

世の中に公的年金の間違った理解が増殖した原因のひとつは、間違いなく金融機関の営業戦略にあります。これは考えてみれば当然で、年金不安を煽ることで自社の保険や投資信託などが売りやすくなるからです。

しかし本書を読んでこられた方ならもうおわかりでしょうが、年金が破綻することはありませんし、今後戦争で日本がどこかの国に占領され、社会制度が根本的に変わってしまうようなことでもない限り、現在の年金制度は続いてゆきます。

一番気をつけなければならないのは、自営業やフリーランスのように自分で年金保険料を納める必要がある人たちが、そういう煽りに惑わされて保険料を払わなくなってしまうことです。もしそうなったら、将来に大きな禍根を残すことになりかねません。

サラリーマンの場合は、これに関してはそれほど心配することはありません。通常ほとんどの人は厚生年金に加入しており、保険料は給与から天引きされますから、保険料が未納になるということはまずないからです。

「年金」という名前が付いた商品に要注意

ただ、そんなサラリーマンでも気をつけなければならないこと、それは不安に煽られて変な金融商品を買ってしまうことです。本稿ではそんな“買ってはいけない金融商品”についてお話をしたいと思います。

結論から言えば、買ってはいけない金融商品の代表は“年金”と名前の付いた商品、たとえば「個人年金保険」とか、名前には入っていなくても宣伝文句で「年金式に分配金が受け取れる投資信託」といった類いのものです。

そもそもこれらの類いの商品はネーミングが秀逸です。「頼りにならない国の年金を補ってくれる頼もしい存在」といったイメージ戦略で売り込みをかけてきます。公的年金の本質や実態を知らない人なら、「そうかもしれないな」と思ってつい買ってしまうことになるでしょう。事実、個人年金保険の契約件数は2000万件と言われています。

ところがこれらの金融商品は実は老後資産形成には向いていないのです。その理由は後ほど詳しく説明します。