退職時期を自分で決める時代に
最後に、人生100年時代の老後資金について重要な点を補足しておきたいと思います。
以前にこちらのコラムでもお話ししましたが、人生100年時代ともなれば、いままでの“延長線”で家計を捉えることは困難だと思います。つまり、家計の常識はどんどん変わっていくと思うのですが、老後資金に関していえば、人生100年という長期化する“老後”のために、いまの退職年齢の相場で事前に老後資金を蓄えておくことは困難だろうと、私は考えています。ですから、多くの人が「長く働く」ことを意識する社会になるのではないかと思います。
だとすると、「MY老後資金」は一体何の意味があるのか、です。一つは「いま」直面している老後に対する余計な不安を解消する点、もう一つは、今後の人生100年時代において、リタイア時期を決める判断材料の一つとして活用できるのではないかと考えています。
どいうことかというと、人生100年時代では、現代のように会社が一様に定年年齢を定めるのではなく、どれだけ資産形成できたか、働きがいがあるのか、健康状態はどうか、そもそも働き続けたいかどうか、といったさまざまな状況を考慮しながら、自分でリタイアの年齢を決める時代になるのではないかと思うのです。そのときに、MY老後資金の考え方が活用できるのではないかなと考えています。
政府は「生涯現役社会」を目指すとしています。そう言うからには、私たちが不安のために働くのではなく、安心して働ける社会になってほしいものです。私たち一人ひとりも、政治家任せにせず、どういう社会が望ましいのか、考えていくことがとても重要な時期に来ているのだと思います。
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