年収をカバーのため過労死基準を超える過重労働の副業をする人も

逆に、年収をカバーしようとすると過重労働になりやすい。パーソル総研の調査では本業と合計した1週間の総労働時間が60時間以上の人が27.7%も存在し、70時間以上の人が11.1%もいる。法定労働時間は週40時間だから、週30時間以上の時間外労働となり、月に換算すると120時間超。1カ月の残業時間100時間の過労死基準をはるかに超えている。

ちなみに転職サイト「Vorkers」(現OpenWork)が調査した年代別の月間平均残業時間は20代・30代は2015年に40~41時間だったが、2018年には28~29時間に減少している。副業している人の中には本業で残業もしつつ、働いている人もいるだろう。

パーソル総研の調査では副業によるデメリットを感じた人が24.8%もいる。最も多いのは「過重労働となり、体調を崩した」が13.5%、次いで「過重労働となり、本業に支障をきたした」13.0%、「本業をおろそかにするようになった」11.3%の順になっている。

副業する人が体を壊しても現行の制度では救済されない可能性大

じつは副業している人が体を壊しても現行の制度では救済されない可能性が高いのだ。たとえば過重労働で過労死した場合、現行の労災保険の補償が受けられる過労死認定基準は、時間外労働が2~6カ月間平均80時間、1カ月100時間を超えて働いていた事実が要件になる。

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しかし現状では1つの会社の労働時間でしか判断されず、2社で働き、100時間を満たしていても労災認定されない。また副業先で事故に遭った場合も不利になる。

労災事故が発生し、社員が入院し、休職を余儀なくされた場合、病院にかかる療養補償給付や休職中の休業補償給付が受けられる。

だが、副業先で災害が発生した場合、休業補償給付の給付基礎日額の算定は副業先の給与のみで算定し、本業の給与は加味されない。副業先の給与が低いと少ない金額しか給付されないことになる。

実際に、先のパーソル研究所の調査でも、週の法定労働時間40時間を超える60時間以上働いている副業者が約30%もいれば、いつ労災事故が発生しないとも限らない。兼業・副業の拡大を推進する政府は「所得の増加に加え、スキルや経験の獲得を通じた、本業へのフィードバックや、人生100年時代の中で将来的に職業上、別の選択肢への移行・準備も可能とする」(成長戦略実行計画)と、メリットだけを強調している。

副業している人の労災補償などの法整備を早急に進めるべきだ。そうでなければ残業代の減少で副業を余儀なくされている人は浮かばれない。

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