“優秀な大学生”なら一定レベルの採点も不可能ではない

ただし、「大学入学共通テスト」の「国語」の記述問題に関するかぎり、人選を間違えなければ、つまり優秀な大学生であれば、あれを“採点できない”ということは、必ずしも言えない。

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それはひとえに、「大学入学共通テスト」国語の記述問題の特質による。

「大学入学共通テスト」国語の記述問題は、大量の枚数を短期間で正確に採点する――のみならず、受験生が少しでも正確に“自己採点(センター試験同様、受験生は同テストの結果いかんによって最終的な出願校を決定するので、即時の自己採点を要求されることになる)”することができるように、解答が“一義的”に決まるよう、さまざまな仕掛けがなされているのだ。

例えば、本文や資料について話し合う【会話文】で解答の方向を“誘導”する。あるいは、設問に過剰なまでの“条件”を付して、解答をにおわせる。

したがって「大学入学共通テスト」の国語の記述問題では、同テストとは別の試験(私大や国公立大の2次試験など)の記述問題にしばしば認められるような、“許容できる解釈にそこそこの幅がある”という事態がそれほど発生しないと推測される。採点者のチーフなどを配置して細かい点をきちんと調整するなら、“優秀な大学生”であればある程度の機械的作業で一定レベルの採点も不可能ではない。

「共通テスト」記述問題採点者に大学生採用は断固“否”

では、それなら「大学入学共通テスト」の記述問題採点者に大学生を採用することは“アリ”なのだろうか?

答えは、“否”である。断固として、“否”である。

先に触れたとおり、私は、長い間模試の採点者をしてきた。その中で、いろいろな経験をした。例えば、私の採点に、受験生から「納得できない」と質問をもらうことはたびたびあった。それは場合によって、クレームとなることもあった。受験生も必死なのだ。

日々のたゆまぬ努力の成果をすべて答案用紙にぶつけた結果、“納得のいかない”採点結果が返却されてきたなら、文句の一つも言いたくなるのは当然だろう。そして考えてみてほしい。

“たかが模試”でも、そのようなことは起きるのだ。

ましてやこれが、実際の進学先を――すなわち場合によっては自分の未来を――決定づけることになる入学試験本番であるならば、得点開示の結果、“採点ミス”や“納得のいかない採点”が判明した場合、それに対するクレームは、より激しくなるだろう。

そうしたプレッシャーを、つい先日まで自らも受験生であった大学生に負わせることは、果たして「国の政策」として許されることなのだろうか。