科学的にも証明された「声を出すメンタル効果」
どうも気がのらない、やる気が出ない、と思ったら、大声で自分を叱咤してみればいい。頭脳はしゃきっとして、あなたの言うことに従うはず。悲しいときは笑ってみる。すると脳には幸福感の伝達物質、エンドルフィンが分泌される。作り笑いでも、笑いにはちがいない。脳は笑いを愉快なことと関連づけるから、急に元気が出る。それと同じように、「自分は闘いたい」「やる気満々だ」ということを身振り手振りで示せば、脳はその気になるにちがいない。ハッタリは効き目がある。
(大坂)なおみは大舞台が好きなのに、ときどき弱気な素振りを見せた。だから、ことあるごとに、こう励ましていた。
「試合中、もっとガッツポーズをとればいいじゃないか、何か強気のアクションをして見せたほうがいいよ」
それで、「カモン!」と叫ぶことを勧めたのである。テレビでなおみの試合を観ていれば、お気づきの読者も多いかもしれない。
なおみがその声をあげると、自ら励まされるらしく、ぐっと強気になってプレイもアグレッシブになった。だから、彼女と組んでいたときは、もっとボディーランゲージに磨きをかけて、相手を威嚇するように勧めた。すると相手は、すごいプレッシャーを感じるはずだから。
コートでは絶対に弱気な態度を見せないこと
同時に勧めたのは、コートでは絶対に弱気な態度を見せないこと。もし弱気な態度を見せれば、相手は必ずそこにつけこんで、攻勢をかけてくる。だからといってひるむなおみではないことは承知していたが、みすみす相手を元気づかせる必要もない。敵にはどんな攻勢のきっかけも与えない――それも忘れないようにしたい。
これは、セリーナ・ウィリアムズと組んでいたときに学んだことである。コートに立ったときのセリーナは、われこそは世界最強のプレイヤー、という気迫を全身にみなぎらせていた。その調子で第1セットをとってしまうと、もう相手は蛇ににらまれた蛙も同然で、容易に反撃できない。セリーナこそはボディーランゲージの名手、「カモン」という叫び声の効果を最大限に利用していた。そうして相手を呑んでかかり、堂々とコートを歩きまわって相手を圧倒するのである。