キリスト教信者は総人口の1%前後

だが現在、キリスト教の国内の信者数はふるわない。日本のカトリック中央協議会によれば、2017年の信者数は約44万人である。カトリックは、札幌から那覇まで大都市を中心に「教区」という単位に分割されている。東京教区は人口1980万人に対し、カトリック信者は約9万7000人。人口の0.5%未満だ。それでも16の教区のうち、2番目に割合が高い。最も信者率が高いのは長崎教区の約4.3%だが、そもそも教区人口が少ないため、信者数は6万人程度にとどまっている。

カトリックの44万人にさまざまなプロテスタント教会の信者数を合計しても、日本の総人口の1%前後と見積もられる。日本のキリスト教は、文化や芸術、あるいはクリスマスのようなイベントとしてはなじみがある。井上ひさし、遠藤周作、曽野綾子といったクリスチャンの作家も親しまれてきたし、国内外を問わず、旅先で高名な教会を訪れる日本人観光客は多い。しかし、「信じる」という形で接する人は常に少数であり、神道仏教とは異なる意味で、信者なき宗教なのである。

聖☆おにいさん』はなぜロン毛とパンチなのか。2つの宗教が日本で禁止されていたり、まったく関心をもたれていなかったりすれば、細かい知識を前提とした面白さは失われてしまう。「信じないが知っている」という独特の関係でキリスト教と仏教に接してきた日本独特の宗教風土が、同作を成立させているのである。

岡本 亮輔(おかもと・りょうすけ)
北海道大学大学院 准教授
1979年、東京生まれ。筑波大学大学院修了。博士(文学)。専攻は宗教学と観光社会学。著書に『聖地と祈りの宗教社会学』(春風社)、『聖地巡礼―世界遺産からアニメの舞台まで』(中公新書)、『江戸東京の聖地を歩く』(ちくま新書)、『宗教と社会のフロンティア』(共編著、勁草書房)、『聖地巡礼ツーリズム』(共編著、弘文堂)、『東アジア観光学』(共編著、亜紀書房)など。
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