映画の中で自衛隊が一番戦った相手は"ゴジラ"
レーガン以後、大統領は映画の台詞や演出を巧みに模倣するようになる。その到達点がトランプだ。在任中のレーガン同様、トランプを描いた映画はない。レーガン自身が巧みに大統領を演じていたからであり、トランプ自身が奇抜で過激なエンターテインメントになっているからだ、と著者は指摘する。
日本はどうか。戦前の首相は、記録映画やニュース映画には登場したが、映画の主役ではなかった。戦後も、映画になるような政治家は見当たらない。『日本のいちばん長い日』の鈴木貫太郎、『小説吉田学校』の吉田茂などの例外はあるが、田中角栄にも小泉純一郎にも、ましてや安倍晋三にも出番はなさそうだ。
タレント政治家はいても、ハリウッドセレブのようなグローバルな発信力はない。
幸か不幸か軍隊もないから、『トップガン』や『エアフォース・ワン』のような名作も出てこないだろう。
そこで著者はこう書く。
〈映画の中で自衛隊が最も頻繁に戦ってきた相手は、ゴジラだったのである。戦後日本がいかに平和であったかを示していよう〉
松井清人(まつい・きよんど)
文藝春秋 前社長
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、74年文藝春秋入社。「諸君!」「週刊文春」、月刊誌「文藝春秋」の編集長、第一編集局長などを経て、2013年に専務。14年社長に就任し、18年に退任した。