「性教育」の意味が、日仏ではまったく違う

現在ではフランス全土の中学校の97%、高校の89%で、上記の指針による「性にまつわる教育」の実施が確認されている。小学校に関するデータはないが、筆者の子どもたちを見る限りでは、その指針はしっかり現場に反映されているようだ。

たとえばわが家では息子の一人が風呂上がりに裸で歩いていると、もう一人が「私的な部分(フランス語でla partie intime)、見せちゃダメだよ!」と注意する。これは私や夫が教えたものではなく、彼らが学校や学童保育で学んだ表現だ。下ネタが大好きな年齢でも、その用語を自然に使い、「守るべき場所」と認識している。そのためか冒頭の出来事のあとも、次男との会話はとてもスムーズにすることができた。

同じ言葉を使いながら、内容がこれだけ異なる日本とフランスの「性教育」。そこには当然ながら、両国の社会通念や文化、習俗の違いが大きく影響している。性教育のあり方は、社会背景のあり方を映す一つの鏡なのだ。

(後編に続く。後編は7月3日公開予定)

髙崎 順子(たかさき・じゅんこ)
ライター
1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)などがある。
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