半径3kmの客を、すべて自分のものにする戦略

まとめると、フーマーでの買い物の仕方は、大きく4つに分かれます。

(1)来店し、商品をカゴに入れ、専用アプリを立ち上げて「セルフレジ」で決済(Alipayのみ対応)
(2)来店し、商品をカゴに入れ、「現金対応レジ」で決済(高齢者や外国人などが利用)
(3)来店し、専用アプリを立ち上げ、カメラで欲しい商品のバーコードを読み、Alipayで決済して、自宅に配送してもらう。時間指定可能。
(4)来店せず、専用アプリ経由で注文してAlipay決済し、自宅に配送してもらう。時間指定可能。

このうち(1)(3)(4)は、前もって専用アプリをインストールし会員登録しておく必要があります。会員は1日1回まで、実店舗で購入した商品の配送が無料になるほか、ほとんどすべての売り場で何らかの会員割引を受けることが可能。フーマー利用客の大半は会員になっていますが、逆に言えば、フーマーで買い物をするなら会員にならないと損、という気持ちにさせられます。

なお、フーマーの発表(2018年9月)によると、会員数(専用アプリとAlipayを紐づけている人)は1000万人。1店舗当たりの平均会員数は15万人で、彼らは月平均6回店を訪れ、月平均575元(約9200円)を消費するそうです。

フーマーF2の顔認証決済レジ。

フーマーはあらゆるインセンティブを駆使して、ユーザーに専用アプリのインストールを積極的に促しています。この背景に、フーマーの「実店舗だけでなくオンラインでも購入してほしい」という狙いがあるのは明らか。つまりアリババは、オンライン配送地域である店から半径3km圏内に住む人のオンライン・オフラインのニーズをすべてまかなうことができるのです。通常のスーパーの商圏は半径300メートルと言われていますから、フーマーがいかに広範の商圏をカバーしているかがわかります。

上海には他にも、ニューリテールを実践する店舗がいくつもありました。例えば、フーマーのコンビニ店舗+フードコート形態である「フーマーF2」では、料理の重量で価格が決まる完全セルフレジのパイキングや、Alipayの顔認証システムによってスマホすら取り出さないで決済できるセルフレジ端末もありました。