客の安心のためなら「生きた魚にもQRコード」

いけすの中を泳いでいる魚(買って帰ることも、有料で調理してもらってフードコードで食べることも可能)の中には、QRコードやバーコードのタグがついている個体もありました。スマホのカメラで読み込むと、魚の産地などが説明されるページに飛びます。

この背景には、中国国内の「食」に対する不安があります。生産者が利益を追求するために、粗悪な原材料を使ってはいないか。虚偽の生産地名を表示してブランド詐欺をはたらいてはいないか。健康被害は大丈夫か。日本よりずっとひどい食品偽装事件が頻発する中国において、「実物を目で確認し、QRコードを駆使してトレーサビリティを高める」この方法は、消費者から非常に歓迎されているのです。

(左)フーマーのいけすコーナー。魚にQRコードタグがついている。(右)QRコードを読み込むと魚の産地が判明する。

デリバリー用の商品が、天井のコンベアで運ばれる!

注文にしたがって商品をピックアップするフーマーの店員。

先述の通り、フーマーには、オンライン注文の倉庫としての役割もあります。ユーザーからアプリ経由で注文が入ると店員の端末に注文情報が入り、店員は店内で商品をピックアップ。

それがバッグにまとめられ、店内の天井コンベアを通って店外の配送口へ。外で待ち構えていたバイクが30分以内に配送してくれるのです。

天井のコンベアは売り場からしっかり見えるようになっており、その様子は非常にエンタメ性が高い印象です。と同時に、たくさんの人がその店で買い物をしているという安心感を客に与えている効果があると感じました。

現金が使えるレジは、ほとんどない

中国では偽札が多く現金の信頼性が低いため、世界で最もキャッシュレス化(スマホによるQR決済)が進んでいます。都市部に限れば、電子マネーであるAlipay(アリペイ)やWeChatPay(ウィーチャットペイ)が使えない店は、ほぼありません。近年急速に「消費者総IT化」が達成された国だからこそ、他のどの国よりも「ニューリテール」との相性がよいとも言えます。

フーマーでは、購入した商品のバーコードを自分で読み取って会計するセルフレジが大半を占めており、買い物客は専用アプリでAlipayのキャッシュレス決済を行っています。上海・星空広場店の場合、現金が使える対面レジはたった1箇所だけ。高齢者や外国人など、キャッシュレス決済に必要なアプリをダウンロードしていない人だけがこの列に並んでいました。一方で、セルフレジは店内のいろいろな場所に分散していて、混雑の緩和にもなっています。また、配送してもらう客が多いので、セルフレジ自体がそれほど混んでいません。

フーマーのセルフレジコーナー。