尋問中は体を震わせ途中で泣き出す社員もいる

一方、大手医療機器メーカーでは調査の方法が2つあるという。

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1つめの方法は、パワハラなどの場合。人事部が被害者と加害者、そして加害者の上司など4~5人の社員にヒアリングする方法。前出の食品メーカーと同じやり方だ。

もう1つの方法は、“被疑者”が部長職など上級幹部やグループ企業の役員の場合。このケースでは監査部が調査に乗り出す。調査結果は社長が指名した役員による「懲罰委員会」に報告され、処罰の判断が下される。

同社の人事担当役員は委員会の様子についてこう語る。

「加害者本人から弁明を聞く機会を設けていますが、実際には被告人扱いです。居並ぶ役員の前で本人が社員番号と氏名を述べた後に、議長が事実関係について尋問します。最終的に事実認定をして処分を下します。重苦しい雰囲気の中で、途中で泣き出してしまう社員もいます。最初から恐れおののいて体を震わせている社員もいます。パワハラやセクハラの場合、初犯なら情状酌量の余地があり、罰則としては譴責程度の処分となりますが、弁明中に『二度とやりません』と泣きながら訴える社員もいます」

パワハラ役員が懲罰委員会で完全に凍り付いた

場所は違うが、裁判所と同じ光景である。

同社では最近、出世し、本社からグループ会社の役員として赴任したものの、パワハラを繰り返したことで処分されたケースもあったという。

「この役員は部門の管理職に対してことあるごとに暴言を吐き続け、周囲の社員にも多大な迷惑をかけていました。ひとりの社員から通報を受けて監査部が調査に入りましたが、役員本人は、最初は頑として事実を認めません。しかし、社員にヒアリングしていくと、パワハラ被害を受けた社員が多数に上ることがわかりました。証言者の多さからしても、役員の『暴言を吐いていない』という発言が真実ではないことは明白でした。最終的に監査部の要請で懲罰委員会が開かれましたが、委員には加害者の上司もおり、役員は最初から完全に凍り付いていました」(人事担当役員)

結局、この役員は降格された上、出勤停止を命じられた。もちろん、今後の出世の芽も絶たれたといってよい。