証拠を提示すると「しどろもどろになります」
こうした犯罪・不祥事に関わる情報は社内通報窓口などのホットラインや内部監査、外部の第三者の通報によって知ることになる。
例えば、労務関連の通報が入ると人事部が事案の信憑性や調査すべきかどうかを判断し、社内の委員会に報告する。会社によって「人事委員会」「企業倫理委員会」「懲罰委員会」と呼ぶところもある。
では事実関係を確認するための調査はどのように行われるのか。前出の食品メーカーの法務担当役員はこう語る。
「当社では、パワハラの通報がくると倫理委員会で取り上げて調査することになります。その際、いきなり加害者に接触するのではなく、まずは被害者本人と面談して状況を確認します。次に、それを裏付ける周囲の信頼できる人間に話を聞いて、かなり信憑性があり明らかにパワハラだという場合は、情報を収集・精査したうえで、加害者に聞きます」
「ほとんどの加害者は否定します。『僕はそんなことは言っていません、ハラスメントの指導する立場ですから』と。その場合、具体的な事実関係の証拠を提示していきます。そうすると相手もしどろもどろになり半ば認める発言を始めます。そして被害者、加害者、周囲の発言などを含めた報告書を倫理委員会に提出した後、加害者が委員会に呼ばれて再び尋問されることになります」
過去の処分例を参考にしながら罰則が下す
倫理委員会で一つひとつ事実関係について聞かれ、明らかに事実と判断した場合は過去の処分例を参考にしながら罰則が下される。
この法務担当役員は「パワハラで懲戒解雇ということはありませんが、継続的に暴言を吐き、周囲もその人の言動に対して嫌な思いをしている人もいるなど、被害者だけではなく周りにも悪影響を与えている場合は、出勤停止や減給もありますし、降格して異動させるケースもあります」と語る。