スポンサー企業の経営者からも「その話聞きたいね」と言われるので、それをきっかけに私という人間に興味を持ってもらい、交友を深めることができました。

世界の果ての珍しい土産話として興味を引いたということはあるでしょうが、それよりも、旅先で私が何を考え、不測の事態にどう対処したかを話すことで、私自身の思考法と判断基準を知ってもらうことができたと思います。

そして社内では、部下に対して「私は現場主義で、旅行では現地の人に話を聞き、もらった情報を基に動くんです」と話すことで、「仕事のうえでもみなさんの話をよく聞いてやっていくつもりです」というメッセージを伝えることができました。

旅の話が、銀行を口説く武器に

聞き手に回っても同じことがいえます。誰かから旅行経験を聞く機会があれば、その人がどんな性格であり、どう接したらいいのかが見えてきます。「旅先でこんな嫌なことに遭った」と繰り返す人は、保守的な性格で、計画的な仕事の進め方をするのではないかと予想できます。旅先での不測の事態を楽しんでいるような話をする人は、新規事業を任せると大活躍するかもしれません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/anyaberkut)

クロスFMの話に戻ります。この会社は再建途上にあり、かつて銀行に債権放棄をしてもらった経緯から、新規融資など頼める状況にはありませんでした。しかし、将来的には資金を出してもらいたいと私は考えていました。そこで地元の有力銀行2行にはダメ元でよく通いました。武器になったのが、旅の話題です。

「面白いやつだ」と思ってもらえたようで、一般向けのイベントをクロスFMに発注するとか、社内の女性を対象とした講演会に私を講師として招いてくれるといった形で、徐々に関係ができていきました。そして最終的には、有力銀行から資金調達をすることができたのです。

旅の話は工夫次第でおもしろくもつまらなくもなります。私の場合、話のストックはたくさんあるので、相手に合わせて興味を持っていただけそうな「ネタ」を選びます。よく訊かれるのは「どこが一番おもしろかったか」という質問。事業家の方にはやはり、ビジネスにつながる話が受けます。

たとえば、現地に溶け込んでいる日本企業の話です。エチオピアに行ったときは、自動車メーカーのISUZUがバスやトラックを意味する一般名詞として通用していて、「あの町へ行くには、どのISUZUに乗ればいいんだ?」と使われていることに驚きました。

現地の文化について話すときも切り口を工夫して、「日本とは違うこういう習慣は、実はビジネスにも活かせるのではないか」といった角度から話すと興味を持ってもらえます。たとえば「南極は共同統治・相互不可侵の原理で各国が基地を置いていますが、そういった所有権のあり方はビジネスの参考にもなるのでは」といった話をします。