「成果=質(生産性)×量(時間)」
たしかに、手を抜かない勤勉さは私たちの誇るべき美徳です。
しかし、力の抜きどころを押さえておかなければ、大事な局面で疲れ果ててしまい、仕事のスピードが落ちたり、モチベーションを下げたりすることになりかねません。そうなると、結果として生産性が低下し、せっかくの努力が水の泡となってしまいます。
こうした生来の勤勉さに、目標やゴールを強く意識する習慣が加わったらどうでしょうか。私たちはより素晴らしい成果を生み出せるに違いありません。
どんな仕事をするにしても、つねに目標やゴールを意識する。これまた、グローバルに活躍している人の仕事意識の「1%の違い」です。
外資系金融やコンサルティングの世界は、競争の厳しい業界として知られています。そのため、私が働いていたゴールドマンやマッキンゼーでは、ハードワークは求められる資質の一つに数えられます。
そして、彼らが実際にハードワークに身を投じるのも、成果を出すという明確な目標(ゴール)があるからです。
成果は「質(生産性)」と「量(時間)」の掛け合わせで決まります。まずは仕事の生産性を上げることが大切ですが、それだけではライバル企業に勝てません。成果を最大化するには、仕事に投入する時間も増やす必要があります。
しかし、ただひたすらにハードワークを肯定すればよいわけではありません。プロフェッショナルとして、自分にとっての仕事の質と量のバランスを的確に見きわめ、コントロールすることも必要です。
自分の「成果の最大化」ルールを見いだす
たとえば、私の元上司は、「どんなに忙しい時期であっても、自身で定めた時刻を過ぎて、やみくもに残業をしない」というルールを大切にしていました。それは、自分にとっての必要な休息時間を確保して、翌日も朝から集中して働くためです。彼は成果を最大化するための退社時間のリミットを、明確に認識していたのでしょう。そのことを過去の経験で把握していたからこそ、残業時間も厳しくコントロールしていたのです。
人によって、「質」と「量」のバランスは変わります。そのあたりのバランスがわからず、やみくもに残業をしていた私からすると、成果を出すために自らをきっちりとコントロールしていた上司は、まさにプロフェッショナルでした。「成果の最大化」という視点で、改めて自分自身にとっての最良のバランスを見直してみましょう。
その意味では、どんなに忙しくても、金曜日の夜だけはオフィスを早く出ることから始めてみてはいかがでしょうか。
オンとオフをしっかり切り替え、心身ともにエネルギーを充電させることで、休み明けの職場に活気が戻りますし、仕事の成果もきっと上がるに違いありません。
ベリタス代表
1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼーを経て、2007年、ベリタスを設立し、プロフェッショナル英語習得プログラム「ベリタスイングリッシュ」をスタート。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(朝日新聞出版)等がある。