社員に海外研修を課したり、英語を社内公用語にするなど、人材のグローバル化を進める企業が急増している。しかし、今こそ企業は落ち着いて、人事上の戦略を根本から見つめなおすべき、と筆者は主張する。
新卒事務系全員、技術系の半数を海外へ送る日立
多くの企業で、やっと人材のグローバル化を進める機運が高まってきたようだ。各社の新たな“人材グローバル化”施策がマスコミにとりあげられることも多くなってきた。
例えば、日本経済新聞によれば、日立製作所は2012年春に入社する社員から、事務系は全員、技術系も半数を将来、海外赴任することを前提に採用するという。また、若手を対象にした語学留学や海外での実務研修、長期の海外出張なども大幅に拡充する。
同社は12年度の海外売上高比率を09年度の41%から50%に引き上げることを目指しており、これは、早期に海外を経験させて、将来、管理職として海外に駐在したときに即戦力となる人材を育てるための仕組みである。
また、三菱商事、丸紅など大手商社も来年春から20代の全社員に海外経験を義務付ける新制度を導入するという。具体的には、語学や実務研修などの名目で半年から2年程度順次派遣する。主戦場が新興国を中心とする海外にシフトしているため、若手のうちに経験を積ませ意識改革を狙うという。
さらに、これらが主に若手対象であるのに対し、管理職層をターゲットにした施策としては、ファーストリテイリングが、ユニクロの海外事業展開へ向けて組織と人員配置を見直すなかで、国内の店長と本部の管理職ら合わせて、約900人全員を3~5年以内に海外拠点に派遣するという報道もある。商品開発などに従事する社員も100人規模で海外に異動させるという。
また楽天などの著名企業が、“社内公用語”を英語にするという報道もあり、また新卒採用において、留学生枠を設ける企業も出てきた。