よその子と比べるというのは本当によくない

【和田】そう。幼児教育には「待つ」ということも大切なんです。焦って子どもに厳しく当たってしまうと、間違いなく勉強ギライになってしまう。ボクは特に東京近郊で、幼児教育に対する誤解が蔓延(まんえん)しているように思うんです。東京では小学校受験がわりとスタンダードでしょ? で、受験で求められるのはみんなと仲良く遊べるとか、上手に傘が開けたり、靴下がはけたりする能力。でも、そんなこと、3年もすれば放っておいてもできるようになる。

和田秀樹さん(撮影=市来朋久)

【佐藤】それなら待っていればいいですよね。いつかは自然とできるようになるんですから。大人になって、靴下をはけない人、いませんものね(笑)。

【和田】そう。そういうことって器用さとかセンスの問題で、個人差もある。でも、つい他の子どもと比較して、できないことを責めたり、親が手を出してしまったりする。結果、子どもに変なコンプレックスを植え付けてしまうことになります。一方、文字や数の勉強は待っていてもできるようにはならないし、やれば確実に結果が出ます。むしろこちらに力を入れるべきなんですよ。

【佐藤】よその子と比べるというのは本当によくないですよね。比較しちゃうとわが子が見えなくなるんですよ。だから私はひたすらわが子だけを見るように心がけてきたつもりです。きょうだい間で比べることもしませんでした。

【和田】そうですね。やる気スイッチというのは人によって違うから、遊びにしろ、勉強にしろ、いろいろなやり方を子どもに対して試してみる。そして取り組んでいる様子をじっくりと見守る。どうやらスポーツや音楽の天才というのは、自分が才能を持っている対象に出合うと、明らかに他の子どもと違う反応を示すそうですが、そんな子どもはホントにまれ。だから、わが子がどんな反応をするのか、ほんの小さな違いを見逃さないようにしないといけない。母親の観察眼が求められます。

「あれ、この子、7+8が他の計算より0.005秒遅いわ」

【佐藤】一緒にたし算の勉強なんかをしていると、「あれ、この子、7+8が他の計算より0.005秒遅いわ」とか気が付くんですよ。その小さな違いが、のちのち大きな躓(つまず)きの原因になると思って、7+8を何度も練習させました。0.005秒の違いに気付いてやれるのは親だけですから、一緒に乗り越えていけるようなやり方を探せばいいんです。やはり、子どもが勉強できないというのは、私は親のせいだと思いますね。親の努力不足。できないのはやり方が間違っているから。その子に合ったやり方を見つけてやれるのも親だけだと思います。

【和田】万人に通用するセオリーのようなものを求める親がいますけど、やはりそれも手抜きです。

【佐藤】よく私のところに「私も佐藤さんのような芯のある子育てがしたいです」と言ってくるお母さんがいるんですが、私、子育てに全然芯なんて持っていないんです。育児書を20冊ぐらい買いあさり、読みあさり、わが子に合うやり方はどれだろうと試行錯誤を繰り返してきただけ。まったく行き当たりばったりの、出たとこ勝負で(笑)。