訪日外国人の約7割が、日本食を楽しみしている。なぜ日本食が人気なのか。食文化史研究家の永山久夫氏は、「日本食の伝統技術は世界に類を見ない。教養として知っておいて損はない」と説く――。
※本稿は、永山久夫監修『ビジネスエリートが知っておきたい 教養としての日本食』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
訪日外国人の7割が「日本食を食べたい」
観光庁が実施した「平成28年度訪日外国人の消費動向」によると、「訪日前に期待していたこと」というアンケートに、約7割の訪日外国人が「日本食を食べること」と答えています。なぜ、外国人は日本食に魅せられるのでしょうか。理由は、おいしさ、ヘルシーさ、見た目の美しさなど、複合的でしょうが、それを支えているのは世界に類を見ない日本食の伝統技術です。
外国人にも人気の高い日本の代表料理のひとつに、刺身があります。世界の食文化史を見ても、魚を生で食べるという発想そのものが極めてユニークであり、刺身を食べるということは、日本の食文化の特異さを端的に体験することなのです。
皿に複数の種類の刺身が盛りつけられている「お造り」は、赤や白など見た目も華やかで、視覚的な美しさも楽しめる料理です。じつはこの盛り付けは、見栄えだけでなく、料理の作法としてのルールや意味があります。
刺身はおいしく食べられる順に並べられている
刺身の盛り付けは基本的に、器の左手前に淡白な白身の魚やイカ、右手前に貝類などの黄色い魚介、奥にマグロなどの赤身魚となっています。これは淡白な白身魚から、味の濃いものへと順に食べてそれぞれの味をしっかり楽しめるように並べられているのです。
この刺身の盛り付けには「山水盛り」と呼ばれる決まった型があります。山水盛りとは、三つの山を作るように七、五、三の比重で刺身を盛ったもので、先ほど紹介した順番で並べられます。さらに、その間にけんやつま、かいしき(飾り葉)が置かれ、さらに辛味が添えられます。