日本人の死因第2位は、虚血性心疾患。いわゆる狭心症、心筋梗塞である。心臓の筋肉に酸素と栄養を供給する血液の通り道が冠動脈。その冠動脈が狭くなるのが狭心症で、詰まってしまうと心筋梗塞である。
狭心症は「安定狭心症」と「不安定狭心症」に分けられる。安定狭心症は階段を上るなどの動作を行うときに胸痛が生じるものの、安静時には、そのような発作は起こらない。
一方、不安定狭心症は発作が安静時にも起こるなど、コントロールしにくいというのが大きな特徴である。
狭心症発作は、なんとか我慢できる程度の胸痛が数十秒から数分間続き、安静にしていたり、ニトログリセリンという薬を使ったりすると改善する。胸痛は胸の中心部やみぞおちが締めつけられるような痛みだが、肩、首、あご、奥歯に痛みが走ったり、しびれ感がでたりすることもある。
このような特徴の違いは、プラーク(粥腫:じゅくしゅ)が破れにくいか、破れやすいか、で決まる。破れやすいのが不安定狭心症で、いつ心筋梗塞を起こしても不思議ではない状態である。
そして、問題のプラークというこぶが血管にできるのが動脈硬化である。血管は内側から「内膜」「中膜」「外膜」の3層からできている。
内膜の表面にある内皮細胞が高血圧、糖尿病、喫煙などが原因で傷つくと、傷口から血液中のLDL(悪玉)コレステロールが内皮細胞の内側に入り込み、それを退治するために白血球が集まり、さらに、中膜の平滑筋細胞も悪玉コレステロール退治に参戦する。
やがて、内膜から中膜にかけて悪玉コレステロールを食べすぎて崩壊した白血球と増殖した平滑筋細胞により、おかゆのようにドロドロしたプラークが形成されるのである。
プラークは被膜で覆われているものの、薄いところは炎症が起きて破れやすい。破れると血液中の血小板が集まり、傷をふさごうとする。まず血小板が凝集し、血液を固めるフィブリンが集まり、さらに赤血球がくっついて血液の塊となって傷口をふさぐ。ところが、それが血栓となって血液の通り道を著しく狭くしてしまう。これが不安定狭心症だ。この段階であればまだ血流はあるものの、いつ心筋梗塞に移行しても不思議ではないので、早急に治療を必要とする。
治療としては、冠動脈の発作の起こるのを防いだり、血栓のできるのを防ぐ薬を使う薬物療法、細い管を血管内に挿入して狭窄部分を広げるカテーテル治療、さらに新たな血管の通り道を作る冠動脈バイパス術などがある。その人の病態に最適な治療を選択し、不安定狭心症の症状を安定させるのである。
ちなみに、次の症状のある人は、早急に循環器内科を受診すべきである。
(1)最近2週間以内に胸痛発作があった。
(2)階段を数段上るなど、ちょっとした動きで発作が起こるようになった。
(3)静かに座っているだけのときでも発作が起こるようになった。
(4)以前、1分程度で治まっていた胸病が、今は治まるまでに5分程度かかるようになった。
【生活習慣のワンポイント】
不安定狭心症の予防はまさに生活習慣の改善がすべてである。
・1日の摂取カロリーを守って適正体重を維持する。
・1日の摂取食塩量は8グラム以下に――。
・お酒は1合までの適量飲酒。タバコは禁煙。
・カフェインを含む飲み物は控える。
・ストレスは上手に発散する。
・十分な睡眠(1日7時間30分)。
・自分の体力に合った適度な運動(1日20分のウオーキングを2回程度)。
・疲れや息苦しさを感じたときは無理をしないで、早めに休憩、休養をとる。