厚生労働省の調査によると、日本人の5人に1人が不眠の悩みを持っているという。それはストレートに「眠れない」ということや「寝てもスッキリしない」ことでの悩みである。当然、生活の質(QOL)は低下する。
脳と体が休んでいる状態が睡眠だ。睡眠をとるから、私たちはまた翌日元気に働ける。生きていくうえで重要な睡眠に問題が生じ、不眠が日常生活に影響を及ぼし始めると、それは「不眠症」という病気として扱われることとなる。
不眠症は睡眠障害のパターンの違いによって、以下の4つに分類できる。
(1)入眠障害……最も一般的な不眠のタイプで、寝つきの悪い状態。布団に入って眠るまでに60分以上もかかってしまう。体内時計が睡眠サイクルに入っていないのに無理に眠ろうとするためで、ストレスが原因であることが多い。
(2)中途覚醒……睡眠の途中で、朝までに何度も目が覚めるタイプ。中高年に多く、必要な睡眠時間以上に布団に長く入っていることが原因となっている。
(3)早朝覚醒……予定の起床時間よりも2時間以上も前に目覚め、もう少し眠ろうとしても眠れない。そのせいで夜には早く眠くなってしまう。原因は体内時計のリズムがより早朝に移行しているためで、やはり高齢者に多くみられる不眠症のタイプである。
(4)熟眠障害……睡眠時間は十分に取れているのに、目覚めてもスッキリ感が得られない。熟睡感がないのである。ほかの3つの障害などに伴って起こることが多い。
このような分類は、自分自身の不眠のタイプを知るのに有用だ。こうしたタイプを正しく知ることが不眠解消への近道になる。
不眠症の治療は精神神経科で行い、なかには睡眠外来という専門外来を設置しているところもある。
治療の第一歩は原因となっている生活習慣の改善である。入眠障害の場合は「眠くなってから布団に入る」ようにし、起床時間を同じにして生活すれば、体内時計の眠くなる時間帯が次第に早くなってくる。
中途覚醒の場合は深い眠りに導くため、日中をもっと活動的に過ごすことを心がけて、運動などを行うようにする。
早朝覚醒の場合は入眠障害とは逆に体内時計を少し遅くする必要がある。それには、夜遅く眠るようにするのが有効な方法の一つである。
加えて、不眠からくる辛い症状を取り除くために「睡眠薬」が用いられる。睡眠薬には鎮静催眠作用と抗不安作用、筋肉の弛緩作用がある。作用時間には2~4時間程度の短いものから10時間以上の長いものまである。症状を的確に主治医に伝えることで、状態に最適な薬が選択される。しかし、慢性化した不眠症では、生活習慣の改善や睡眠薬を使っても効果がでてくるまでに長くかかる場合があることに留意したい。
【生活習慣のワンポイント】
ストレス解消に最も効果的なのが十分な睡眠。元気に日々を過ごすために“快眠の10個条”を実践するべきである。
(1)毎朝決まった時間に起き、朝日をあびる。
(2)朝食をきちんと摂る。
(3)午後7時以降はカフェインの入ったコーヒー、紅茶、緑茶などの摂取は避ける。
(4)日中は適度な運動などをして、活動的に過ごす。
(5)眠るための“寝酒”は厳禁。
(6)眠くなるまでベッドに入らない。
(7)夜は、室内の照明を抑えるようにするとともに、パソコンに夜遅くまで向かったり、ゲームなどを行わないようにする。
(8)昼寝をする場合は20~30分程度にとどめ、午後3時までにとる。
(9)室内は睡眠に適した環境(室温、湿度、寝具、照明、音響など)にする。
(10)休日だからといっていつまでも眠っていない。普段通りに起床し、寝不足のときには“昼寝”をする。