ビジネスの「効率」を可視化する変換

ここまでは日本の人口というマクロの数字を使ってきましたが、日常ではもっと細かい@変換が活用されます。

たとえば、先ほどのように会社の売上を社員数で割ってみる。そして、1人当たりの売上の業界平均と自社の数字を比較する。すると、自社のビジネスは効率がいいのか、それとも悪いのかが見えてきます。

もっと細かく、商品ごとに1個当たりの宣伝コストを出してみることも可能でしょう。

その結果、実は儲かっていると見られていた商品が意外と利益が取れておらず、宣伝をあまりしないのに売れている別の商品が利益を支えていた、などという現実が見えてくるかもしれません。

この@変換を最も頻繁に活用している業界の1つが、小売業です。その代表的な例が「1坪当たり」の@変換。チェーン展開をしている小売店が、各店舗のパフォーマンスを判断する際、単純に売上の大きさを比較するだけではあまり意味がありません。店によって店舗の大きさが違うからです。

「坪単価」が重要視される理由

そこで、売上を1坪当たりに@変換してみると、「A店は売上は大きいけど、効率はあまりよくない」「B店は売上は中程度だけれど、坪効率は非常に高い」などといった、その店舗ごとの実力や特徴が見えてくるのです。

ちなみに最近は「1㎡当たり」で数字を出すことが多いようです。経済産業省が公表している商業統計(平成26年)によれば、売場面積1㎡当たり平均年間商品販売額は、コンビニエンスストアで149万円、百貨店で103万円、専門スーパー53万円、ドラッグストア64万円などとなっており、いかにコンビニが効率よく稼ぐことができるかが見えてきます。

もちろん、ここで上げたような@変換の例はあくまで仮説であり、実際には見当外れのものであることも十分考えられます。ただし、数字を元にした仮説があるからこそ、それを前提として議論ができるようになる。そして、物事も前に進むようになるのです。

間違いを恐れずに、あらゆる数字を@変換し、自分事として語ってみましょう。「数字で話す」のは、そこがスタートとなります。

斎藤広達(さいとう・こうたつ)
経営コンサルタント
シカゴ大学経営大学院卒業。ボストンコンサルティンググループ、ローランドベルガー、シティバンク、メディア系ベンチャー企業経営者などを経て、経営コンサルタントとして独立。数々の企業買収や事業再生に関わり、社長として陣頭指揮を行い企業を再建。その後、上場企業の執行役員に就任し、EC促進やAI導入でデジタル化を推進した。現在は、AI開発、デジタルマーケティング、モバイル活用など、デジタルトランスフォーメーションに関わるコンサルティングに従事している。
(写真=iStock.com)
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