「@変換」で会社の数字を見てみる

実際の会社の数字を使って、少しトレーニングをしてみましょう。

斎藤広達『数字で話せ』(PHP研究所)

ファーストリテイリング社が運営する「ユニクロ」を知らない人はいないでしょう。いまや日本国内だけでなく海外19カ国にて展開するグローバルブランドとなっています。2018年度にはついに、海外売上が国内売上を抜いたことでも話題になりました。

とはいえ、国内ユニクロ事業の年間売上だけでも約8647億円もあります(2018年8月期実績)。では、この数字を@変換すると、何が見えてくるのか。

まずはマクロの視点で「日本人の人口」で@変換してみることにしましょう。日本人の人口をざっくり1億人とすると、1人当たり年間8600円ほどとなります。

ユニクロのラインナップは幅広いですが、仮に購入単価を1500円として計算すると、

8600円(1人当たり購入額)÷1500円(購入単価)= 5.7

つまり、年間1人5~6アイテムを購入している、という計算が成り立ちます。

この数字からは、2カ月に1回1アイテム、あるいは年2回の季節の変わり目に2~3アイテムずつユニクロの商品を購入しているという仮説が成り立ちます。

確かに、夏前にはデザインTシャツを、冬前にはヒートテックなどの防寒着を、と考えると、そのくらいかもしれません。まさに国民服と言っていいほどのブランドだということがわかります。

仮でもいいので「数字化」する重要性

一方、あなたがユニクロ事業の担当者だとしたら、この数字をどのように捉えればいいでしょうか。

定期的に商品を購入してくれるお客様がこれだけいる以上、まずは廉価で高性能な必須アイテムを常にそろえていくべき、ということになるでしょう。下手に高級感のある商品開発にばかり力を入れてしまっては、「せっかく来たのに欲しいものがない」ということになりかねません。

いかがでしょうか。もちろん、ここで紹介した@変換の手法とそこから得られた結論は、あくまで一例です。全国民がユニクロの商品を買っているわけではありませんし、他にもいろいろな切り口があります。詳細な会計数値を使うことで、より正確な分析をすることも可能です。

ただ、大事なのはざっくりでもよいので、その場で@変換を使い「現場感」を得ることです。@変換によって、脳が活性化される感覚を味わってみてください。