日本の教育は「総崩れ」ではない

【佐藤】だけど、教えた中学生の中には、大学レベルの授業に十分ついて来られる子もいて、驚きました。しかも、生徒たちには、他人の気持ちになって考える共感力があった。「受験刑務所」化していない証拠です。

先生と話していると、口には出さないけれども、受験には適性があるという思いが伝わってくるんですね。「覚えて再現する」という試験にも向き不向きがあるから、1、2年間頑張って、向いていないと思ったら無理して難関大学を目指す必要はない。受かる大学でしっかり勉強して、そこで上位層に食いこむほうが、よほど意味があるだろう、と。実際に生徒を教え、先生たちと話してみて、あそこの教育はグローバルスタンダードに耐えうるんじゃないかと、私は個人的に思いました。

あえてそういう経験をお話しするのは、特定の学校を持ち上げることが目的ではありません。日本の教育が大変なことになっているのは確かなのだけれども、かといって「総崩れ」になっているわけではない。そこも正確に見ながら必要な改革を進めていくことが大事だ、と考えるからなのです。

池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト
1950年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHK入局。報道記者として事件、災害、教育問題を担当し、94年から「週刊こどもニュース」で活躍。2005年からフリーになり、テレビ出演や書籍執筆など幅広く活躍。現在、名城大学教授・東京工業大学特命教授など8大学で教える。『池上彰のやさしい経済学』『池上彰の18歳からの教養講座』など著書多数。
佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年東京都生まれ。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、09年6月、執行猶予付き有罪確定。13年6月、執行猶予期間満了。『国家の罠』『自壊する帝国』『修羅場の極意』『ケンカの流儀』『嫉妬と自己愛』、共著に『独裁の宴』など。