トレーニング効果を高める摂取量の計算式とは
では、「最適なタンパク質の摂取量」とはどのくらいなのでしょうか?
よく「1食当たり20gを目安に」といわれますが、現代のスポーツ科学やスポーツ栄養学では、「筋トレ後の1食当たりの最適なタンパク質摂取量は、年齢、体重、トレーニング内容によって決まる」と考えられています。
2009年、カナダ・トロント大学のムーアらは、体重の異なる20代の若者と70代の高齢者を集め、レッグエクステンションを行った後に0~40gのタンパク質を摂取させ、筋タンパク質の合成率を計測しました。
その結果、筋タンパク質の合成率が最も高まる摂取量、すなわちタンパク質の最適な摂取量は、「年齢」と「体重」によって違いが生じることがわかりました。また、ムーアらはこのとき得られたデータを解析し、「1食当たりの最適なタンパク質の摂取量」を考える際に役立つ係数を導き出しています。
◎高齢者は、体重1kg当たり平均0.40g(0.21~0.59g)
(※係数は平均値を示しており、カッコ内は最小値~最大値を示しています)
例えば、この係数をもとに、体重60kgの20代の若者がトレーニング後に摂取すべき最適なタンパク質量を計算してみると、
「係数の平均値0.24g×体重60kg=14.4g」となります。
一方で、高齢者の係数は若者のそれと比べて数値が大きくなっています。これは、加齢に伴って筋タンパク質の合成能力が低下する「合成抵抗性」が考慮されているからです。
タンパク質量はトレーニング内容によって変える
なお、ムーアらの報告はレッグエクステンションという「単関節トレーニング」によって得られたデータです。
では一方で、スクワットやベンチプレスといった「多関節トレーニング」では、1食当たりのタンパク質摂取量は変わるのでしょうか?
この問いに答えたのが、スターリング大学のマコトンらの研究報告です。
20代のトレーニング経験者(平均体重70kg)を対象にして、スクワットやベンチプレスなどの多関節トレーニングを10回3セット、疲労困憊になるまで行わせました。トレーニング終了後、2グループに分け、一方はホエイプロテインを20g、もう一方は40g摂取し、3時間後と5時間後の筋タンパク質の合成率を計測しました。
その結果、40g摂取したグループのほうが筋タンパク質の合成率が増加していたのです。
ムーアらが示した係数を踏まえれば、体重70kgの20代の若者が必要とするタンパク質の摂取量は、平均値で16.8g、最大値でも21gとなります。しかし、マコトンらの報告では、同じ体重70kgの20代の若者でも、より激しい多関節トレーニングを行った場合は、40g摂取したほうが筋タンパク質の合成が高まっています。
これら一連の報告を受けて、現代のスポーツ科学やスポーツ栄養学では、タンパク質の摂取量はトレーニング内容の違いによって変わるとしているのです。
つまり、単関節トレーニングを行う場合は、ムーアらが示した係数を活用し、必要なタンパク質の摂取量(A)を割り出します。多関節トレーニングを行う場合は、トレーニング内容の違いを考慮した差分として、(A)に10g程度プラスする、という形です。
例えば、体重70kgの20代の若者がベンチプレス、スクワットなどの多関節トレーニングを行った場合、必要となるタンパク質の摂取量は、ムーアらが示した係数が示す摂取量16.8gに10gプラスした合計26.8gが、最適なタンパク質摂取量の目安となります。