クライアントのために粉骨砕身の日々

この真理に気付いたきっかけは、クライアントである米企業・X社の日本上陸のPR活動を手伝ったときに遡る。当時、私は広告代理店の社員で、ミッションは次のようなものだった。

【1】上陸を高らかに発表する記者会見の運営
【2】X社のメディア露出を最大限にするためのメディアへのアプローチ
【3】記者会見後のメディアとの個別インタビューのセッティング
【4】X社のCEOを含めた幹部たちの、訪日中の宿泊先や食事の確保といった下準備

たとえば【4】については「朝食に寿司を食べたい」などと要求されるため、築地市場の有名店「寿司大」へ朝5時に出向き、「おまかせ寿司」を8人前買って宿泊先に届けたりした。とにかく広告代理店というのは、客のためには何でもやるのである。

メインイベントである記者発表会は11月1日だったのだが、私は準備が本格化する10月16日から11月1日までの17日間で、家に帰れたのはわずか4回、総滞在時間は5時間である。X社の本社があるアメリカ・西海岸との時差の関係もあり、昼間は日系クライアントの仕事をし、夜が深まってからX社の仕事をした。

深夜、クライアントの担当者が電話口で叫んだ

アメリカ現地の始業時刻である午前9時は、日本時間では午前2時である。X社の日本法人の担当者・A氏とは、20時あたりからやり取りが頻発し、書類の修正などを次々と命じられ、X本社の始業時間に間に合わせるべく日英両語での資料作成を求められたりした。

そんななか、午前2時まで数時間というところでA氏から新規書類の依頼が来た。X社幹部が日本滞在中、いかなる動きをするのかを「これからすぐエクセルにまとめてほしい」という依頼である。私は別クライアントの業務にも追われていたので、さすがに「それは難しいです」と返答したところ、彼女は電話越しで狼狽して、こう叫んだ。

「困ります! これを出さないとジェニー(本社の上司)が怒るんです!」