製造業の中では「食料品」や「医薬品」は女性役員比率が全業種平均を上回る一方、「パルプ・紙」や「鉄鋼」、「機械」や「金属製品」はかなり低い。一般に、STEM(科学「Science」、技術「Technology」、工学「Engineering」、数学「Math」の4分野)にかかわる業種や職種において、役員に限らず従事している女性が少ないという現実がある。そうした業界では、そもそも企業において指導的な地位に立つ女性の人材プールが小さく、当然の帰結として、女性役員比率が低くなっている可能性が考えられる。

社外取締役ですら女性を登用していない業種もある

女性役員の構成は、社内人材と社外人材のバランスにおいても業種間で違いが見られる。内閣府の「女性役員登用の閣議決定目標『2020年10%』達成に向けて」(平成29年2月)に、業種ごとの女性社内取締役等(取締役・監査役・執行役)と、女性社外取締役等(取締役・監査役)の状況が示されている。

本稿では社内・社外ともに女性比率が高い企業を①、社内は高いが社外が低い企業を②、社内・社外ともに女性比率が低い企業を③、社外は高いが社内は低い企業を④と分類した(図表2)。

 

その結果、①には「保険」「空運」「水産」「小売業」「通信」「医薬品」などがプロットされた。女性役員の登用という点で、社外と社内の人材活用のバランスが図られているとみることもできよう。また、②は「サービス」や「不動産」が位置している。①と②については、内部昇進の女性役員が一定程度登用されている。

一方、④に位置する「電力」「石油」「銀行」「鉄道・バス」「輸送用機器」は、女性社内取締役等がいる企業比率が低い、あるいはゼロであるが、女性社外取締役等がいる企業比率が業種平均を上回っている。これらの業種では、女性役員の登用を外部人材の活用によって行っている傾向が強い。今後、一般の従業員や管理職のクラスに占める女性比率をさらに高めることで、内部からの女性役員登用を拡大する余地が大きい業種といえよう。

③に位置する「造船」や「鉄鋼」は、女性社外取締役等がいる企業比率も、女性社内取締役等がいる企業比率も、両方が業種平均を下回っている。これらの業種では、これまでの女性採用比率が低かったことや、役員候補となる女性人材のプールが小さいことなどを背景に、内部昇進による女性役員の登用が少ないと推察される。かといって、外部人材から女性社外取締役等を登用している状況にもなく、ダイバーシティ経営の推進という潮流に乗りきれていないという課題を指摘できる。